2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20580214
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Research Institution | Teikyo University of Science & Technology |
Principal Investigator |
平井 俊朗 帝京科学大学, 生命環境学部, 准教授 (30238331)
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Keywords | 生殖腺 / 性分化 / 可塑性 / 性転換 / 水産学 / 発生・分化 / コイ / 内分泌 |
Research Abstract |
メダカにおいてストレスホルモンが遺伝的雌魚の性転換(精巣化)を誘導することが明らかとなり(熊本大学との共同研究)、「環境ストレスによる性のゆらぎ」が注目されるようになった。そこで同様の現象が他の魚類においても起こりうるのかをコイを用いて検証した。コイ雌1年魚に対するコルチゾール継続投与を実施したところ、6ヶ月間投与では卵巣組織崩壊の兆候は確認されたものの精巣化は確認されなかった。現在、1年魚よりも性的可塑性が高いと考えられる0年魚についても同様の実験を行っている。 性的可塑性に関連する分子の候補として、始原生殖細胞および精原細胞の増殖ならびに性分化への関与が示唆されている生殖腺体細胞由来増殖因子(GSDF)に着目した。コイより2種類のGSDF完全長cDNAをクローニングし、in situハイブリダイゼーション法により生殖腺性分化との関連性について検討した。全般的にKoiGSDF1の方がKoiGSDF2よりも高い発現を示したが、両者の局在はほぼ重複していた。形態的雌雄差が現れた直後である4ヶ月齢では、雌雄ともに生殖腺で強い発現が認められたが、すでに発現強度、発現分布に雌雄差が見られた。一方、16ヶ月齢では、雄では精原細胞の近傍に強い発現が認められたのに対して、雌ではごく限定された領域に存在する卵原細胞の周囲においてのみ強い発現が確認された。その領域はコイ遺伝的雌過年魚(卵巣分化後)において雌性ホルモン合成阻害剤持続投与により精巣組織が誘導される部位(性的可塑性保持領域)に酷似していた。したがって、GSDFは卵巣内における性的可塑性の維持に関連している可能性が示唆された。 本研究の成果を踏まえて、研究協力機関である新潟県内水面水産試験場において平成23年度より県新規事業としてニシキゴイ全雌生産技術開発に向けた実用化研究を開始することとなった。
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Research Products
(5 results)