2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20580217
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 啓之 Hokkaido University, 大学院・水産科学研究院, 助教 (90241372)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾島 孝男 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 教授 (30160865)
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Keywords | 軟体動物 / 筋収縮 / 筋収縮調節 / トロポニン / 分子機構 / FRET / 化学架橋 |
Research Abstract |
ウサギまたはアカザラガイの筋収縮調節タンパク質であるトロポニン(Tn)の収縮抑制サブユニット(TnI)について、一次構造上の異なる3つの部位に、唯一のCysを含む変異体を大腸菌発現によって作成した。これらのCysを蛍光ドナー試薬(IAEDANS)でラベルした後、他のサブユニット(TnCおよびTnT)とともにTnを構成させた。一方、アクチンのCys-374を蛍光アクセプター試薬(DABMI)でラベルし、前述のTn、および、トロポミオシンと混合して、筋原線維中のアクチンフィラメントに相当する複合体を調製した。蛍光エネルギー移動法により、ドナー・アクセプター間の距離を求めた結果、ウサギTnIのCys-133について、Ca^<2+>非存在時/存在時におけるアクチンとの距離は4.17nm/5.47nmであった。この結果は既報と良く一致しており、TnIのCys-133付近がCa^<2+>非存在時にはアクチンに結合して収縮を抑制し、Ca^<2+>存在時にはアクチンから離れて収縮の抑制が解除されるという、近年提唱されているTnの作働機構を反映していると考えられた。一方、アカザラガイTnIのCys-133に相当する部位を同様にラベルして実験を行うと、アクチンとの距離はCa^<2+>非存在/存在時に、3.89nm/4.37mと見積もられ、Ca^<2+>の有無に関わらずアクチンと接近していることがわかった。さらに、蛍光ドナー試薬に代えて、二価性架橋試薬(BP-Mal)を導入し、この部位に近接するサブユニットの同定を行ったところ、ウサギでは、Ca^<2+>非存在時にアクチン、存在時にはTnCに近接していることが示されたのに対し、アカザラガイでは、Ca^<2+>の有無にかかわらずTnTに近接していた。以上の結果より、軟体動物Tnにおいては、TnIのCys-133付近の機能や高次構造が脊椎動物Tnとは大きく異なっていることが示された。
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