2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20580217
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 啓之 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 助教 (90241372)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾島 孝男 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 教授 (30160865)
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Keywords | トロポニン / 筋肉 / 筋収縮調節 / カルシウムイオン / 温度適応 / 軟体動物 / 節足動物 |
Research Abstract |
(1)アカザラガイ・トロポニンCのC末端ドメインと、このドメインと結合する部位を含むトロポニンIの断片を調製し、両者の結合を等温滴定型カロリメトリーによって解析した結果、結合はMg^<2+>によって変化しないが、Ca^<2+>の存在によって約3倍強くなることが示され、この相互作用の変化が筋収縮の引き金になっていることが示唆された。また、化学架橋試薬を用いた検討により、この時、トロポニンIの残基147付近がトロポニンCから遠ざかる一方、残基160付近は逆にトロポニンCに接近するような構造変化をしていることが明らかになった。(2)寒水域に生息するホタテガイと、より暖水域に生息するアカザラガイの間で、横紋閉殻筋に存在するトロポニンCの2つのアイソフォーム(ShortタイプとLongタイプ)の比率が異なることが明らかになった。両アイソフォームはC末端ドメインの8残基のみが異なるが、それぞれの筋収縮調節能を比較したところ、ホタテガイに多いLongタイプの方がより低いCa^<2+>濃度で収縮を活性化させることが明らかとなった。これは、ホタテガイの横紋閉殻筋がアカザラガイのものより速く収縮・弛緩することを意味しており、ホタテガイの低水温への適応や、アカザラガイが岩着生であるのに対し、ホタテガイは底生性で遊泳のために速く殻を開閉させ必要がある等、生態の相違にも関連すると考えられた。(3)節足動物(アメリカンロブスター)のトロポニンCについて、N末端およびC末端ドメインのいずれか一方にしかCa^<2+>を結合しない変異体を作成し、その機能を野生型トロポニンCと比較したところ、C末端ドメインにしかCa^<2+>を結合しない変異体もある程度の筋収縮活性化能を持つことが示された。従って、C末端ドメインへのCa^<2+>結合による筋収縮活性化の機構は、軟体動物のみならず節足動物にも存在し、動物界に普遍的に存在する可能性が示された。
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