2008 Fiscal Year Annual Research Report
外国人研修生・実習生の受入動向から見る国内農業構造の将来展望の検討
Project/Area Number |
20580229
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
保木本 利行 Yamagata University, 農学部, 助教 (90261685)
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Keywords | 外国人 / 研修生 / 実習生 / 農業 / 固定費拡大 / 事業規模拡大 / 労働規制強化 / 担い手 |
Research Abstract |
本年度は、外国人研修生・実習生受入にかかわる諸関係機関として、全国及び各県の、JITCO・農業会議所・中小企業団体中央会・労働基準局、および茨城県を中心に外国人研修生・実習生1次受入機関となっている各単協、民間型事業協同組合等を広く取材し、論点発掘型の聞き取り調査を実施した。 外国人研修生・実習生の受入は、安易な労働搾取型経営展開、固定費用圧縮型の経営展開の典型のようにマスコミ等で問題視され報道される場合が多いが、茨城等の近郊型野菜産地で進行しているのは、全く逆の動向であった。すなわち、従来取られてきた農繁期の日本人臨時雇用という流動費型労力対応が近年急速に困難化しているにもかかわらず、地域の担い手層二極化はますます鮮明になり、中核農家層は家族対応が不可能な規模の農地引受を迫られるようになってきている。結果、年間一人当たり200万円超もの固定的支出を伴うにも関わらず、中核農家層は外国人研修生・実習生の受入に経営存続の活路を見いださざるを得なくなっている。しかし、わずか一名の研修生受入でも、流動比率50%と仮定して損益分岐点で最低400万円超の売上増加を必要とする。ここに固定費増大と事業規模拡大のネズミ車的連鎖ともいえる経営構造変貌が強いられることになる。さらに、従来は労働基準法の適応除外に近い扱いであった農業分野でも、こと外国人受入については、さまざまな社会的・国際的摩擦への懸念から、製造業に準じた雇用契約関係の成文化や労働時間規制等が求められている。これが従来の家族経営的労働規範や小経営故の自己搾取型労働強化対応とさまざまな面で齪齬を生じる。食糧供給に責任を持ち続けようと努力する大規模経営者層や地域農協組織は、増加する事業規模と社会的責任のもと、苦悩を深めている現状にある。
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