2009 Fiscal Year Annual Research Report
キリマンジャロの農家経済経営と農村発展:フェア・トレードの役割
Project/Area Number |
20580237
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻村 英之 Kyoto University, 農学研究科, 准教授 (50303251)
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Keywords | 現金現物日記帳 / 農家経済経営 / 絶対的貧困 / 家計安全保障 / 相互扶助システム / 農業経済 / 農業経営 / 国際農業 |
Research Abstract |
現金現物日記帳を集計した結果、キリマンジャロの農家経済経営の構造を、下記のように量的に把握することができた。 K兼業農家の当年度の粗所得は1,265,150Tshs、所得的失費は323,800Tshsであり、差し引き941,350Tshsが農家所得である。しかし家計費は1,455,960Tshsのため、514,610Tshsもの損失が生じている。ところが、仕事を持つ息子・娘たちから寄付金(515,000Tshs)が頻繁に提供され、その損失を補填している。 コーヒーが凶作のため、男性産物販売額(121,700Tshs)よりも女性産物販売額(152,250Tshs)の方が多いという異常な年度である。家計仕向けは196,700Tshsであり、飲食費全体(499,380+196,700Tshs)の28.3%を占めるに過ぎない。しかし穀物(バナナを含む)だけに限定すると、その主食自給率は65.6%と高くなる。 その他、農家所得に占める農業所得の割合15.6%、農業所得による家計費充足率10.1%、エンゲル係数31.5%と、意外と低い数値になっている。家族1人当たり1日当たり家計費は997.2Tshs(0.95US$)であり、1人当たり1日1ドルの消費という絶対的貧困ラインを下回っている。 T準専業農家の場合はもちろん、農家所得に占める農業所得の割合68.8%、農業所得による家計費充足率65.8%、飲食費自給率60.8%、主食自給率88.5%と、農業への依存度が高くなる。しかしその場合、コーヒーの凶作もあって、家族1人当たり1日当たり家計費が371.9Tshs(0.35US$)となり、より貧困度合が増してしまう。 以上のように、コーヒーをはじめとする「男性産物」販売代金の家計内での支出のされ方については、把握が困難な年度であるが、逆に最低限の家計水準を維持する、つまり家計安全保障のための、拡大家族間の相互扶助システムや女性産物の重要性をより詳細に確認できた。
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Research Products
(4 results)