2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20580242
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
坪田 邦夫 Kyushu University, アジア総合政策センター, 教授 (40432885)
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Keywords | 農業政策分析 / アジア途上国 / 生産者支持推定量 / PSE / 農政改革 |
Research Abstract |
H21年度は、本研究の2年月として、研究参加6カ国(インド、パキスタン、タイ、マレーシア、インドネシア、台湾)の6カ国の担当者とともに国別PSEの具体的推定に取り掛かった。その際、内外価格差推定に関連する各国特有の諸問題を一つ一つ整理するとともに、最新データ(2008年)の取り込み、検証を行った。平成21年1月には、国際機関APOと共同で、関係者による中間発表会を開催し、最終報告作成に向けての問題点の整理と、総合報告のアウトラインを決定した。具体的な活動とその成果は、次のとおり。 1.国別PSEの第1次推定:参加6カ国について、前年度に開発したPSE標準テンプレートを用いて、1990-2006までの国別、品目別PSE,CSE,TSEの第1次推定を行った。データのそろっているインド、インドネシア、台湾については、PSEの水準及びその変化方向について政策動向と整合的な推定結果が得られた。すなわち、農業保護における価格支持の比重が依然高いこと、国際市場動向や為替変動とPSE水準が相互に打ち消しあうように動くこと、全体としては緩やかに改革の方向に進みつつあることなどが確認された。 2.パキスタン、タイ、マレーシアのPSE推定:データの不備などで、説明しがたいPSEの変動が観察され、データの正確さの吟味、内外価格差推定方式の検証などが必要と感じられた。今後穀物や畜産物など主要品目についてより良い価格・コストデータへの置き換えや、コメなど一物二価となっているケースの内外価格差の分離推定による補完が不可欠である。 3.技術係数等の吟味:各国のPSE試算から、内外価格差推定に用いられる、2つの技術係数、すなわち重量感算係数と品質調整係数が、PSEの水準に大きく影響することが判明した。特に、生産者段階とで商品の性質ゆ形態が異なる、畜産物、サトウキビ、ゴム、タバコなどでこの傾向が著しい。今後さらに感応度テストを行うとともに、技術専門家や市場関係者による検証を進めたい。 4.APOとの合同会議:平成22年1月19-20の両日、東京のAPO本部で、6カ国の国別研究者と、OECD及びタイからPSE推定の専門家(OECD農業局レッグ課長、タイ・カセサート大学ブンジット教授)も交えて中間発表会合を開催した。その結果、1990年以降貿易の自由化や農政改革が行われてきたとされるアジア途上国において、(1)まだデカップリング進んでいない、(2)農業生産者支持水準が経年的に低くなる傾向は認められない、(3)支持水準は為替や国際価格の変動に応じて大きく揺れ動く、(4)一部諸国では、マイナスの支持になる時期がある、ことなどが明らかになった。これら中間結果は、方法論とデーターの再吟味を行ったうえ、来年度に統合して報告書とすることになった。 5.九州大学アジア総合センター紀要への投稿:本年度の中間成果は、2010年3月に発行の、紀要に投稿し、採択、掲載された。
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Research Products
(1 results)