2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20580257
|
Research Institution | National Agricultural Research Organization |
Principal Investigator |
原 珠里 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター・農業経営研究チーム, 主任研究員 (30355466)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澁谷 美紀 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター・北海道農業経営研究チーム, 主任研究員 (00355265)
|
Keywords | 女性農業者 / キャリア形成 |
Research Abstract |
日本における農村女性支援施策について、その位置づけと推進過程をとりまとめるとともに、時代の変遷にともなう新たな課題を析出した。 また、家族経営に関わる女性農業者およびその配偶者に対する質問紙を利用した調査を実施し、女性農業者の財務や販売に関する自己評価が比較的高いのに対し、栽培管理や機械操作に関しては評価が低いこと、自分の配偶者に対しては対照的な評価を行っていることを明らかにした。このことは女性のキャリア形成において配偶者を中心とする経営上のパートナーとの相対的な能力評価が重要であることを示す。また、各種のセミナー経験等は財務・会計などの能力評価とは関連を示したが、全般的には経営における役割分担を行っている領域に関して女性農業者は高い自己評価を示す。すなわち、学習自体も重要ではあるが、実際に役割を分担していることの意義が大きいと見られる。 女性起業にたずさわる女性農業者のライフヒストリーにおけるキャリア形成過程を聞き取り調査により明らかにし、直売所を女性農業者のキャリア形成の場とするためには、リーダーに偏りがちな役割を組織的に分担し、後継者育成を行っていくことが重要であることを示した。 上記の成果および過去2年間の海外調査結果をとりまとめ、報告書を刊行した。その中で、海外事例との比較から、女性個人の教育や志向による専門分野という意識が日本の事例では比較的低いこと、また婚姻によって得られる女性の権利が不十分であることが多い一方でそのことに対する意識も低いこと、これと関連して世代間分離が進んでいないこと、結婚後の農業関連の講座等の多様性が低いことなどを指摘した。日本における女性農業者のより円滑なキャリア形成のためには、世帯主義的な法制度を再点検する必要があり、また女性個人の生き方を支援する学習機会の提供をおこなうなどの支援が必要であると考える。
|