Research Abstract |
本年度は,地表水分計測用のTDRプローブの開発を中心に研究を進めた.地表付近の土壌水分は地上の条件や土壌の透水性と関係深く,土壌面蒸発や植物蒸散を推定する上で大きな影響を及ぼすことが知られている.しかし,地上付近の土壌水分分布の時空間的変化が大きいため,土壌水分の細かい間隔で時間的変化を捉えることが必要である.従来の土壌水分計は大きすぎて,その目的に合わなかったが,TDR水分計のプローブを開発することによってその要件を満たす可能性があった.そこで本研究では,プリント可能な電子基板を用いて,基板上に3mm間隔で9本の線を描いて,隣り合う3本で一つのプローブ,つまり合計で8つのプローブ,として配線を行った.すなわち,この基板は3mm間隔で8点の土壌水分を計測できる多点プローブである.TDRでは,ケーブルテスター,マルチプレクサー,コンピュータを接続し,波形解析や計測制御にはTDR用ソフトであるWinTDRを用いた.まず,多点プローブの個々のプローブについてエタノール,植物油を用いて比誘電率の校正を行った.その結果,個々のプローブ間には誘電率の計測値に多少のずれはあったが,個々の校正式を使えば問題ないことが分かった.次に,本多点プローブに対して砂土の体積含水率と誘電率との関係を調べた.計測したこの関係は,基板を使用しているためTDRの普遍校正式であるToppの式には合わず独自の校正式を作った.これらを準備したあと,砂土とマサ土について,蒸発実験を行い,多点プローブを用いて蒸発過程における体積含水率分布を調べた.その結果,蒸発に伴う地表付近の体積含水率分布が土壌によって大きく異なることが明らかになった.以上のことから,開発したプローブを用いると,これまで測定困難とされていた土壌のごく表層の鉛直水分分布をミリメータ間隔で計測できることを明らかにした.
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