2010 Fiscal Year Annual Research Report
温度周期性に応答するカビ成長パターンの幾何学的解析とポストハーベストへの応用
Project/Area Number |
20580273
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
小出 章二 岩手大学, 農学部, 准教授 (70292175)
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Keywords | ポストハーベスト病害 / リンゴ / 病斑 / こうじかび病 / 損傷 / 予測モデル / 形状 / 温度変動条件 |
Research Abstract |
昨年度、世界で初めて積算温度の概念を用いて温度変動条件に対応できるコロニー上のカビの発芽・コロニー径の簡易予測モデルを導出・検証したが、実際の農産物上でのカビの成長(大きさや形状)については不明な点が多い。本年度はポストハーベスト病害の一つである貯蔵中のリンゴに発生するこうじかび病に着目した。測定は、人工的に傷をつけ損傷させた市販リンゴを供試材料とし、これにAspergillus nigerを接種した後、種々の温度条件(35~15℃)や温度変動条件(某デパート内の温度環境を参考に再現)下で貯蔵し、こうじかび病の病斑部の直径と形状を測定した。併せて、貯蔵中のガス条件を低酸素濃度とし、リンゴこうじかび病の成長に与える影響を考察した。 その結果、簡易予測モデルを収穫後のリンゴこうじかび病の病斑径の経時変化に対して適用した結果、モデルは高い適合性を示し、併せて温度変動下の病斑部成長を精度よく予測出来た。また病斑成長速度や病斑形成時間の温度依存性は、一般に用いられている予測微生物学的モデルにより近似出来ることが示された。一方、病斑部は高二酸化炭素濃度と低酸素濃度の条件下で成長が阻害されることが示された。また、病斑部は褐色となり、果皮に損傷部位を中心に円形(真円に近い)に広がり、複数の病斑を成長させると、病斑が重なり合うが、その面積は中心間距離で求められることが示され、温度条件が分かれば病斑面積の予測も可能であることが示された。 更にポストハーベストにおける損傷果実の病斑の成長は、貯蔵温度の影響を受けやすいが、貯蔵中に温度変動の条件(例えば、室温と低温の繰り返し)を付すだけでも、病斑成長をある程度効果的に遅延出来ることが示された。即ち、青果物の低温貯蔵の有用性が、腐敗防止の観点から示された。
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