2008 Fiscal Year Annual Research Report
虚血病態下の脊髄におけるプリン化合物動態変化とそのメカニズムの解明
Project/Area Number |
20580317
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
乙黒 兼一 Hokkaido University, 大学院・獣医学研究科, 助教 (40344494)
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Keywords | アデノシン / プリン化合物 / 新生ラット / 脊髄反射電位 / 高炭酸アシドーシス / 低酸素 |
Research Abstract |
本研究の目的である中枢神経系の虚血病態メカニズムとプリン化合物の動態変化を明らかにするために、新生ラットから摘出した脊髄標本を用いて、脊髄反射電位とプリン化合物濃度に対する高炭酸アシドーシスの影響を検討し、以下の結果を得た。 1. 摘出脊髄標本を高炭酸アシドーシスまたは低酸素に短時間(10-15分間)曝露すると、脊髄反射電位の単シナプス反射電位(MSR)と多シナプス反射電位(遅い前根電位 : sVRP)は可逆的に抑制された。3. 高炭酸アシドーシスによる抑制に関してさらに検討を進め、アデノシンA1受容体拮抗薬存在下では、MSRとsVRP抑制効果がどちらも半分程度に有意に減少することが示された。4. 外因性に適用したアデノシンも、MSRとsVRPを濃度依存性に抑制した。また、ATPも両反射電位を抑制したが、この抑制効果もA1受容体拮抗薬で消失した。5. 高炭酸アシドーシスによる販社電位抑制効果は、ヌクレオシドトランスポーターやギャップジャンクションヘミチャネル、P2X7受容体、アニオンチャネルなどの各阻害薬の影響を受けなかった。6. HPLCを用いた測定によって、高炭酸アシドーシスによって細胞外アデノシンが上昇すること、またこの反応はTTX抵抗性、外液Ca非依存性であることが示された。また細胞内のアデノシンをトラップするホモシステインチオラクトンは、高炭酸アシドーシスによるアデノシン放出を有意に抑制した。以上の結果から、高炭酸アシドーシスでは細胞内アデノシンが放出され、脊髄シナプス伝達が抑制されることが明らかとなり、虚血病態下におけるプリン化合物の役割の重要性が示唆された。
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