2009 Fiscal Year Annual Research Report
パラポックスウイルス感染症の皮膚病変発現に関する細胞生物学的研究
Project/Area Number |
20580339
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
猪島 康雄 Gifu University, 応用生物科学部, 准教授 (20355184)
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Keywords | パラポックスウイルス / 血管内皮増殖因子 / ウシ / ヒツジ / ヤギ / ニホンカモシカ / 感染症 / 血管内皮細胞 |
Research Abstract |
パラポックスウイルス(PPV)感染症は、同じウイルスが感染しても動物種の違い(ウシ、ヒツジ、ヤギ、カモシカ)により皮膚病変の程度が大きく異なる。本研究では、皮膚病変に差が生じる要因を明らかにすることを目的とする。 本年度は、動物種間の解析に必要なカモシカ大動脈の入手機会の少なさに対応するため、カモシカ内皮細胞にSV40Tを導入し、株化カモシカ内皮細胞を樹立した(Inoshima, Y.et al., Cell Biol.Int.33 : 617-620, 2009)。国内分離6株について、PPVがコードする血管内皮増殖因子(VEGF)の塩基配列を決定、VEGFのmRNA発現時期、発現VEGFの血管透過性活性、内皮細胞増殖活性を解析し、カモシカ内皮細胞が最もよくVEGFに反応し増殖することを明らかにした。細胞の増殖性が病変の重症度に関連することを示唆した(Inoshima, Y.et al., Vet.Microbiol.140 : 63-71, 2010)。 PPVがコードするVEGFについては、ウイルス株間の保存性を、過去にカモシカで流行したPPVと現在流行しているPPVとを比較したところ、約20年前のPPVと現在のPPVのVEGF遺伝子の塩基配列、アミノ酸配列は極めて高い保存性を示した。VEGFのほかに、エンベロープ、VIR遺伝子についても解析し、VEGFを含め3領域はカモシカに感染しているPPVでは、よく保存されていることが明らかとなった(猪島康雄ら、第148回日本獣医学会)。 これらのことから、カモシカ内皮細胞がほかの動物種と比べPPVのVEGFによく反応し増殖することと、カモシカ内皮細胞がよく増殖するVEGFと同じ遺伝学的特徴を持ったPPVが、数十年もカモシカに馴化・感染していることが、カモシカにおける皮膚病変の重症度に関与している可能性が示唆された。
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