2010 Fiscal Year Annual Research Report
パラポックスウイルス感染症の皮膚病変発現に関する細胞生物学的研究
Project/Area Number |
20580339
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
猪島 康雄 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (20355184)
|
Keywords | パラポックスウイルス / 血管内皮増殖因子 / ウシ / ヒツジ / ヤギ / ニホンカモシカ / 感染症 / 血管内皮細胞 |
Research Abstract |
パラポックスウイルス(PPV)感染症は、同じウイルスが感染しても動物種の違いにより皮膚病変の程度が大きく異なり、ウシで軽度、ヒツジ・ヤギで中等度、カモシカで重症となる。本研究では、皮膚病変に差が生じる要因を明らかにすることを目的とする。 PPVがコードしている血管内皮増殖因子(VEGF)に対する血管内皮細胞の反応性の動物種差が、皮膚病変発現の差に関与している可能性を、ウシ、ヒツジ、ヤギ、カモシカの初代内皮細胞を用いた増殖試験で示唆した(Inoshima, Y.et al., Vet.Microbiol.140:63-71, 2010)。反応性をさらに検討するため、それぞれの動物種の細胞内のカルシウム動態の解析を試みた。はじめに解析に用いる細胞の播種数、検出試薬の種類、測定機器の設定などの最適条件を検討し、現在解析中である。 また、本年度は宮崎県で口蹄疫が国内で10年ぶりに発生した。PPV感染症は口蹄疫との類症鑑別が困難なことが多く、家畜とカモシカ間の伝播リスクがあることから、カモシカ生息地内の3放牧場と非生息地の1放牧場のウシでPPVに対する抗体陽性率を調べた。抗体陽性率は特定の放牧場での飼育歴に関係するが、カモシカ生息域との関係は否定され、PPVと口蹄疫のカモシカへの伝播リスクには違いがあることを明らかにした(Ito, M., Jpn.Agr.Res.Q.45:123-127, 2011)。 さらに、水族館飼育のゴマフアザラシからPPV遺伝子を日本で初めて検出し、遺伝子解析により、アラスカのゴマフアザラシで検出されたPPVと遺伝的に極めて近いPPVであることを明らかにした(大野佳ら、第16回日本野生動物医学会、猪島康雄ら、第150回日本獣医学会、投稿中)。しかし、VEGF遺伝子の検出ができず、これまでのPPVのVEGFと遺伝学的に大きく異なることが示唆された。
|