Research Abstract |
中枢神経系のミエリン低形成とミエリンの解離を特徴とし,膜蛋白アトラクチンをヌル欠損するmvラットを用いて,アトラクチンの中枢神経系の役割を明らかにする基礎データーを得ることを目的として,mvラットにおけるミエリン関連遺伝子および蛋白の発現動態を調べた.2,4,6,10週齢のmvホモ型および対照ラットの脊髄(腰部)を用いて,proteolipid protein(PLP)およびmyelin basic protein(MBP)の免疫染色を実施した.全ての週齢において,PLPおよびMBPの免疫染色性が低下していた.PLP mRNAおよび蛋白の発現量は,4週齢から有意に低下していた.MBP mRNA発現量は4,6週齢で低下傾向を示し,MBP蛋白発現量は10週齢で有意に低下した.CNP mRNA発現量は,4,6週で低下傾向にあり,CNP蛋白発現量は4週齢で有意に低下した.これらミエリン遺伝子および蛋白の発現量の低下は,mvラットにおけるオリゴデンドロサイトの機能異常を示唆し,発症メカニズムとして重要と考えられた.また,新規ミエリン異常ミュータントラットの病態解析に着手した.このミュータントでは,脊髄白質においてミエリン低形成および軸索周囲における空胞形成が観察された.空胞形成は4週齢において顕著であり,その後10週から20週齢では徐々に空胞病変が軽減した.病変部のオリゴデンドロサイト数は,4週齢から増加し,10週および20週齢では対照ラットに比べて有意に増数していた.このミュータントラットでは,何らかのオリゴデンドロサイトの機能異常があり,代償性の過形成が生じている可能性が示唆された.
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