Research Abstract |
アトラクチン欠損ラットと脱髄モデルであるdmyラットのミエリン病変形成における鉄代謝の変化を比較検討した.dmyラットではミエリン病変の進展に一致して,グリア細胞に鉄蓄積が認められ,抗酸化酵素であるheme oxygenase-1が発現上昇していることが示唆された.dmyラットのミエリン崩壊の病理発生に鉄蓄積と酸化ストレスが関わることが示された.新たなミエリン異常ミュータントであるVFラットの予備的な病態解析を行った.2,4,10,20週齢の発症(ホモ型)ラットおよび非発症(ヘテロ型)ラットの脳,脊髄を採材し,観察した.また,脊髄白質を中心に透過型電子顕微鏡下で観察した.病変部位におけるグリア細胞の動態を解析するため,抗Iba-1(ミクログリア),GFAP(アストロサイト),NG2(オリゴデンドロサイト前駆細胞)抗体を用いた免疫組織化学およびPLPに対するRNAプローブを用いたin situ hybridization(オリゴデンドロサイト)を行った.VFラットは生後10日頃から振戦症状を示し,4~8週齢で重篤となり,その後徐々に軽減した.ホモ型ラットの脳,脊髄において軸索周囲に異常な空胞が認められ,4週齢で最も顕著となり,その後減少した.また,ホモ型ラットのミエリン厚は対照に比べ薄く,ミエリン低形成が示された.病変部において活性化したミクログリア,アストロサイトが観察された.病変部におけるオリゴデンドロサイトの細胞密度は,対照ラットと比較して4週齢から増加傾向を示し,10,20週齢においては有意に増加した.発症ラットのオリゴデンドロサイトの細胞突起は,対照ラットに比べて短く,未分化な形態を示すものが多く,オリゴデンドロサイトの成熟異常によるミエリン形成不全が示唆された.
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