Research Abstract |
わが国の小型哺乳類に分布する病原性Bartonella属菌の生態を明らかにすることを目的とし,北海道,青森,群馬,神奈川,静岡,石川,長野,島根,徳島,愛媛,鹿児島,沖縄で捕獲した合計685頭の小型哺乳類(アカネズミ224頭,ヒメネズミ35頭,エゾヤチネズミ17頭,オキナワハツカネズミ7頭,クマネズミ297頭,ドブネズミ105頭)のBartonella属菌の分布状況,保有菌種ならびに宿主特異性について細菌学的,分子生物学的手法を用いて検討した。 176頭(25.7%)の小型哺乳類からBartonella属菌が分離された。郊外で捕獲した個体の51.8%(176/340)からBartonella属菌が分離されたのに対し,市街地で捕獲した個体からは同菌は分離されなかった。また,アカネズミの60.3%(135/224),ヒメネズミの54.3%(19/35),エゾヤチネズミの23.5%(4/17),クマネズミの6.1%(18/297),が陽性であったのに対し,オキナワハツカネズミ(7頭)とドブネズミ(105頭)からはBartonella属菌は分離されなかった。分離されたBartonella属菌は系統解析により7つのグループに分類され,5つのグループはそれぞれB. grahamii, B. taylorii, B. rattimassiliensis, B. phoceensisおよびB. tribocorumのクラスターに分類された。他の2つのグループは,新種のBartonella属菌であると思われた。
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