2010 Fiscal Year Annual Research Report
豚レンサ球菌の調節系遺伝子欠損株を用いたワクチン候補の開発
Project/Area Number |
20580349
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
大崎 慎人 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所細菌・寄生虫病研究チーム, 主任研究員 (80355164)
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Keywords | 疾病予防制御 / 獣医細菌学 / 分子遺伝学 / ワクチン開発 |
Research Abstract |
豚レンサ球菌(Streptococcus suis)はブタやヒトに重篤な疾病を引き起こす人獣共通病原体である。本菌強毒株は多様な表現型を示し、病原因子及びワクチン開発に有用な因子に関する情報が少ないことが、本菌感染症の予防に有効なワクチン開発の妨げとなっている。一方、Multilocus sequence typing型別では、S.suis集団のうちST1 complexとST27 complexがブタやヒトに強毒な株を多く含む集団として注目される。 本課題では、これら2つの集団を排除すべき対象に設定し、代表株から作製した調節系遺伝子欠損株の弱毒生ワクチン候補としての有用性の検討を行った。 自然宿主である豚の鼻腔内接種実験において、P1/7株(ST1 complex)由来調節系遺伝子欠損株であるclpP欠損株は、親株及び遺伝子相補株と比較して致死率及び髄膜炎形成率の有意な低下が認められた。また、欠損株接種豚では実質臓器からの菌分離率は明らかに低下したが、扁桃からは親株及び相補株と同様に分離され、欠損株は扁桃への定着能を維持していることが明らかになった。また、S.suisの有力な感染防御抗原と考えられる夾膜多糖類に対するclpP欠損株接種豚の抗体応答には個体差が認められたが、同週齢のコンベンショナル豚のそれと比較して高い値を示し、扁桃において継続した抗原刺激が起きていることが示唆された。 以上の成績から、ST1 complex代表株から作出したclpP欠損株は、豚に対して明らかな病原性の低下を示し、扁桃定着能もあることから、生ワクチン候補として有望と考えられる。本株の免疫誘導能及び感染防御能については今後の更なる解析が必要である。
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