2010 Fiscal Year Annual Research Report
Ce(IV)とフッ素アニオンを用いる有機ケイ素化合物からの新規ラジカル発生法の開発
Project/Area Number |
20590003
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
内山 正彦 金沢大学, 学際科学実験センター, 准教授 (40277265)
|
Keywords | ラジカル / セリウム / 一電子酸化 / フッ素アニオン / 有機ケイ素化合物 |
Research Abstract |
昨年度の実験結果をもとに,硝酸二アンモニウムセリウムとリン酸エステル類である(BuO)_3POから新たに生成していると思われる,有機溶媒に可溶なCe(IV)酸化剤を単離・精製し,これと有機ケイ素化合物およびフッ素アニオンとの反応を試みた.しかしながら,新たなCe(IV)酸化剤の単離・精製が予想に反して困難であり,生成したCe(IV)酸化剤の溶液から溶媒を減圧留去した後,真空乾燥を行ったが,得られた残渣は複雑な混合物であると思われ,精製や組成分析が出来なかった.また,混合物のまま,有機ケイ素化合物,フッ素アニオンとの反応も試みたが,有機ケイ素化合物からのラジカル発生を示す生成物は全く得られなかった.これまでのところ,有機ケイ素化合物とフッ素アニオンをCe(IV)酸化剤で処理することで炭素ラジカルを発生させるという,本研究の目的は達成していないが,いくつかのCe(IV)酸化剤について検討する過程で興味深い知見が得られた.前述した(BuO)_3POの代わりに,工業用の金属イオン抽出剤であるリン酸ジ(2-エチルヘキシル)を用いて新たなCe(IV)酸化剤を生成させるため実験を行ったところ,当初の目的とは異なるが,触媒量のCe(IV)やCe(III)を用いた水中での酸化的ラジカル炭素-炭素結合形成反応を見出すことができた.この反応は,空気中の酸素によるCe(III)の再酸化によって触媒反応となっているものと思われるが,詳細については更なる研究が必要である.本反応は用いるCe塩の量を触媒量に減らすことができるだけでなく,有機溶媒の代わりに水が使用できるといった点で,コスト面・環境面から非常に期待が持てる反応である.
|