2010 Fiscal Year Annual Research Report
ニッケル触媒による新規溝呂木-ヘック型ドミノ反応の開発
Project/Area Number |
20590009
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
池田 慎一 名古屋市立大学, 大学院・薬学研究科, 准教授 (90254309)
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Keywords | ニッケル / 溝呂木-ヘック反応 / ドミノ反応 / β-酸素脱離 / β-炭素素脱離 / 切断 |
Research Abstract |
有機合成化学の分野において効率的な炭素-炭素結合形成法の開発は重要な課題である.近年一回の反応で複数の炭素-炭素結合を連続的にかつ高選択的に形成することが可能な,ドミノ反応と呼ばれる反応手法の開発が盛んに検討されている.その中で,遷移金属触媒反応に基づいたドミノ反応の例はこれまでにも数多く存在し,その代表として,パラジウム触媒による,いわゆる「溝呂木-ヘック反応」を鍵とするドミノプロセスがある.申請者は,一段階多成分連結反応の新たな展開をはかる目的で,この「溝呂木-ヘック型反応」を鍵とするドミノプロセスを「ニッケル触媒」下において行い,更に「ニッケルで特徴的に起こる変換反応」を本系の鍵反応として組み込むような反応設計をすることにより,これまでにない新しい型式の触媒的ドミノプロセスを構築することを目的として研究を行った.本年度では、前年に引き続き、環状並びに非環状アリルアルコール類のアルケン部位への挿入を経る反応を検討した.エンインのアルケン部にアリルアルコール誘導体を有する反応基質を合成し,α,β-共役エノンとの反応を検討した結果,アリルアルコール類のアルケン部位への挿入を経た後,ニッケルに対してβ-位の炭素-酸素結合の切断(β-酸素脱離)にて反応が完結するプロセスが予想通り進行することが分かった.シス-ならびにトランスの環状アリルアルコールを有する基質での検討では、シス体からはβ-酸素脱離を経た生成物が、トランス体からはβ-水素脱離を経た生成物が得られ、反応機構に関する新たな知見も得られた。
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