2008 Fiscal Year Annual Research Report
量子化学計算を用いた誘起CD励起子相互作用による天然物の絶対配置決定法の確立
Project/Area Number |
20590030
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Research Institution | Kyushu University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
細井 信造 Kyushu University of Health and Welfare, 薬学部, 准教授 (60209236)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
勝本 之晶 広島大学, 大学院・理学研究科, 助教 (90351741)
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Keywords | 量子化学計算 / 絶対配置 / 分子力場計算 / 円二色性 / 立体配座解析 / 赤外分光 |
Research Abstract |
水酸基のβ位に不斉中心を有する一級アルコールを、報告者らが開発したビナフチル型発色試薬,3-cyanocarbonyl-3'-methoxycarbonyl-2,2'-binaphthaleneを用いて誘導体化したところ、何れの場合も良好な収率で対応する誘導体を与えた。得られたたすべての2,2'-ビナフチルエステルにおいて、240nm付近に相反する符号をもつCDバンドが観察された。各種誘導体について分子力場による立体配座解析(CONFLEX-MM2)を行ったところ、以下のことが明らかとなった。すなわち、いくつかの場合において、最安定配座における2つの2-ナフトエート基の長軸方向の電気遷移モーメント間のねじれの方向が、励起子カイラリティーの符号から予測されるものと異なるものであった。そこで、2-ナフトエートのエステル部分と分子内の別の官能基との間で強いかまたは中程度の分子内相互作用を有する2種の2,2'-ビナフチルエステルに対して、時間依存密度汎関数法を用いたCD計算および立体配座解析を行った。ここで用いた計算方法は力場計算より精度の高いものであり、直接CD値を求めることができる。上記2種の誘導体の最安定配座における2-ナフトエート基の長軸方向の電気遷移モーメント間のねじれの方向が、励起子カイラリティーの符号から予測される結果と一致することが明らかとなった。本結果は、中程度かそれより弱い分子内相互作用をもつ基質の場合、時間依存密度汎関数法がその絶対配置を決定する上で有効な手段となることが示唆された。
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