Research Abstract |
本研究は,細菌感染時に特異的に発現ずるiNOSが如何なる蛋白質をS-ニトロシル化し,その蛋白質が如何に敗血症の病態形成に関与するのかを明らかにすることを目的とする.本年度は,この研究過程で発見したiNOS結合蛋白質のSPSBファミリー蛋白質がiNOSをいかに制御するのかについてさらに詳細に検討した.その結果,1)iNOSは,通常,細胞質に凝集するような局在を示すが,SPSB1,SPSB2,及びSPSB4の存在下では細胞質全体に広く拡散するような局在をとること,2)RAW264.7マウスマクロファージにSPSB蛋白質のインヒビターであるiNOS(1-124)断片を過剰発現させて内在性のSPSB蛋白質の機能を阻害すると,iNOSの寿命が著しく延長され,それによりNO産生量は劇的に増加し,その結果,マクロファージのNO依存的細胞死が起こること,3)マクロファージにおいて,SPSB蛋白質に結合できないiNOS(N27A)変異体の寿命が野生型のiNOSと比較して著しく長いこと,を明らかにした.以上の結果をJournal of Biological Chemistry誌において発表した.また,iNOSインヒビターを全身の細胞で発現するトランスジェニックマウスの作出に用いるコンストラクトを作製した.このマウスは,「iNOSが分解されないマウス」になることが予想され,今後のiNOS分解系の生理機能の解明や,iNOS分解系の異常が原因で起こる病態の解析に大いに役立つことが期待される.
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