2010 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳動物における新規薬物排出輸送体MATEの構造と機能及び相互作用
Project/Area Number |
20590059
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
大塚 正人 岡山大学, 自然生命科学研究支援センター, 准教授 (30243489)
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Keywords | 多剤耐性 / 薬物輸送 / 有機カチオン / MATE / プロトン交換輸送系 |
Research Abstract |
腎臓や肝臓の細胞膜上に発現するトランスポーター群は、その多様な分子認識・輸送機構と発現分布によって代謝物や薬物の排泄過程に対して重要な役割を担っている。この排出は上皮細胞のbasolateral 側とapical 側の2つの細胞膜を介したtransepithelial輸送であり、複数のトランスポーターが関与している。血液中の有機カチオン性代謝老廃物はOCT(organic cation transporter)によりbasolateral側から取り込まれ、比較的高分子の化合物はapical側に存在するMDR(mutidrug resisitance factor)によって排泄されている.しかし、低分子の有機カチオンは H+との交換翰送で排泄されることは知られていたが、いまだにその実体は解明されていなかった).細菌のMATE(multidrug and toxinextrusion)はもっとも最近になって同定された多剤排出トランスポーターであり、動物・植物にも疑似の蛋白質が存在していることがデータベース解析により示唆されていた.しかしその機能は全く分かっていなかった.私は、MATEファミリーの輸送体の哺乳類におけるorthologueがOCの最終段階の排出を担っていると推定した.私は、このヒト及びマウスのMATE orthologue2種をそれぞれ同定し、MATE1及び、MATE2と名付けた.そしてそれらが肝臓及び腎臓において排泄の最終段階を担うOC/H+トランスポーターの分子実体そのものであることを証明した(Otsuka M.et.al.: A human transporter protein that mediates the final excretionstep for toxic organic cation Proc.Natl.Acad,sci.USA.2005.).私が明らかにしたMATEタンパク分子群は、肝臓・腎臓以外にも性ホルモン等の分泌臓器に発現しており、生体内において多様で重要な役割を果たしていると考えられる.MATEトランスポーターの機能についての研究は生体内における有機薬物輸送・排泄の全貌解明のみならず、脂溶性ホルモン分泌機構なども含めた有機物の輪送メカニズムの全貌解明に直結していると思われる.本研究において私は、1.MATE1及びMATE2の構造と機能の決定及びその輪送メカニズムを解明した.これまでのデータベース解析により、哺乳類におけるMATE orthologueはMATE1, 2以外にさらにもう1種類存在していることが示唆されている.申請者は既にその遺伝子断片をヒト組織より単離している。そこで、2.第3のMATE orthologueとなるMATE3のcDNA全長クローニングを行い、機能を解析した。また、肝臓及び腎臓における薬物排出を司るtransepithelial輪送に関与するトランスポーター分子は数種類存在しているので、これらのトランスポーター分子群は協奏的に機能して薬物排出機能を発揮していると考えられる。このことから、腎臓の糸球体における薬物の排出は厳密に制御された機構により調節されていると予想される。すなわちMATEが何らかの活性調節を受けている可能性が示唆される。また、MATEのC末端付近には比較的長大な可溶性の部分が存在している。この仮定に基づき3.MATEの親水性領域等に相互作用する制御分子を探索した。その結果数種の相互作用するタンパク質を発見した(論文投稿中)。
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