Research Abstract |
22年度は化学物質によるIL-1の発現制御について,タバコと関節リウマチに焦点を当て研究を行った.滑膜細胞を用いての解析:MH7A細胞やRA患者由来線維芽細胞様滑膜細胞をタバコの主流煙抽出物CSCで刺激したところ、IL-1βのmRNAが誘導されたが,肺上皮細胞株肺胞上皮癌株A549,肺線維芽細胞株MRC5,変形性関節症患者由来線維芽細胞様滑膜細胞ではIL-1βmRNAの誘導はほとんど認められなかった。さらに,MH7A細胞においてはCSC刺激によりNF-κBとAP-1の活性化が誘導されたが,肺線維芽細胞株においては,NF-κBの活性化は誘導されたが,AP-1活性化はあまりみられなかった.従って,CSCによるMH7A細胞と肺線維芽細胞におけるIL-1βmRNAの誘導の違いはAP-1活性化によるものと考えられた.また,主流煙抽出物CSCを分画したところ,MH7A細胞においてIL-1βmRNAを誘導する活性の多くはpH9では水層に,pH6ではエーテル層に見出された. 動物実験:前年度までに,主流煙CSCをコラーゲンとエマルジョンにしてDBA1/Jマウスに免疫すると、コラーゲン誘導性関節炎の発症が用量依存的に増強されること,CSCを一次免疫1日前に腹腔内投与した場合でも関節炎の発症の増強効果が認められることを明らかにしている.さらに,より喫煙に近い条件を想定し,CSCを一次免疫7日前と1日前に鼻腔内に投与しても,同様に関節炎発症の増強効果が認められた.鼻腔内投与は,一次免疫1日前の一回投与でも有効であった.また,CSC中の活性物質は,ニコチンとは異なること,pH13では水層に,pH9ではエーテル層に分画されることを明らかにした.DBA1/Jマウスは多環芳香族炭化水素に抵抗性であることから,活性物質は多環芳香族炭化水素とは異なるものであることが示唆された.
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