2010 Fiscal Year Annual Research Report
カポシ肉腫関連ウイルスに対する分子標的治療法の開発研究
Project/Area Number |
20590068
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
野口 耕司 慶應義塾大学, 薬学部, 准教授 (80291136)
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Keywords | KSHV / ヘルペスウイルス / がん / 分子標的 / 抗がん剤 / 感受性 / NF-kappaB / cyclin |
Research Abstract |
カポシ肉腫関連ウイルス(Kaposi's sarcoma-associated virus/KSHV、またはヒトヘルペスウイルスー8/HHV-8)は、1994年に同定された比較的新しいガンマヘルペスウイルスである。カポシ肉腫関連ウイルスに対する有効な新しい抗ウイルス薬治療法の確立というのは、実際の患者に有益な研究課題と考えられ、本研究課題では、カポシ肉腫関連ウイルスの遺伝子発現による薬剤感受性の変化のプロファイル作成と、その情報を基盤にしてカポシ肉腫関連疾患に有効な薬剤の探索する実験を計画した。 前年度までの結果で、ウイルス遺伝子発現細胞株では、抗がん剤感受性に感受性が変わっていることを見出していた。そこで、本年度では、vFLIP発現によるブレオマイシン高感受性の原因については検討したところ、NF-kappaB経路の阻害蛋白質のlkBalphaのノックダウンで同様のブレオマイシン高感受性化が認められた。従って、NF-kappaBの活性化がブレオマシイシンの感受性に重要であることが明らかになった。一方、ブレオマイシン処理によるDNA損傷について検討したところ、Rad51のfoci形成、Chk2のリン酸化など親株とvFLIP発現細胞の間で明確な違いは無かった。これらの観察から、ブレオマイシンのDNA損傷効果は両細胞で同等に起きていることが明らかになり、その後の過程でことなるシグナル伝達が誘導されているものと思われる。実際に感受性が異なることと相関して、細胞周期停止反応は、vFLIP発現細胞の方が強く起きていた。この結果から、ウイルス遺伝子発現細胞では、それぞれの抗がん剤処理によるDNA損傷とそれに続くDNAダメージチェックポイント機構が、NF-kappaB経路で制御されていることが推測される。今後もその詳細な分子機構の解析が望まれる。
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