2008 Fiscal Year Annual Research Report
上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤に対する耐性シグナルの解析
Project/Area Number |
20590077
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
伊藤 文昭 Setsunan University, 薬学部, 教授 (80111764)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西尾 和人 近畿大学, 医学部, 教授 (10208134)
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Keywords | 上皮増殖因子受容体 / チロシンキナーゼ阻害剤 / ゲフィチニブ / 抗がん剤 / 抗がん剤耐性 / ErbB3 |
Research Abstract |
多数のがんで上皮増殖因子受容体(EGFR)の過剰発現や変異が見つかっており、EGFRの異常ががん化に関与していることが知られている。gefitinibやerlotinibといったEGFRチロシンキナーゼ阻害剤は、10-20%の非小細胞肺がん患者に対して効果を示すが、その後、がん細胞は耐性を示すようになり臨床上の大きな問題となっている。本研究では、Exon 19に15塩基の小欠損を持ち、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤に高感受性のヒト非小細胞肺がん細胞PC-9から、EGFRチロシンキナーゼ特異的阻害剤AG1478に対する耐性株の単離を行い、耐性獲得機構の解析を行った。PC-9細胞を500 nM AG1478で繰り返し処理し、生き残った細胞を耐性株(R1-1、R2-1細胞)として単離した。AG1478のPC-9細胞に対する50%生存阻害濃度(IC50)は約80 nMであったのに対し、耐性株R1-1、R2-1細胞では2μM以上であった。PC-9細胞および耐性株におけるEGFR Familyの発現量を比較したところ、耐性株では、PC-9細胞に比べ顕著にErbB3発現量の減少が確認できた。また、PC-9細胞ではErbB3は恒常的にリン酸化されており、そのリン酸化はAG1478により抑制されたが、耐性株では恒常的リン酸化は確認できず、EGFR/ErbB3ダイマー形成も減少していた。耐性株におけるErbB3発現量の減少がAG1478に対する耐性獲得の原因であるかを確認するため、PC-9細胞のErbB3発現量をRNA干渉(RNAi)法により抑制したところ、AG1478に対するPC-9細胞の感受性が低下することが分かった。以上より、PC-9細胞ではEGFR/ErbB3が生存シグナル伝達に重要な働きをしているが、耐性株ではErbB3発現量の減少により、生存シグナルはErbB3に依存しない他の経路に移行したことが推測される。この結果、EGFRチロシンキナーゼに耐性になったと考えられた。
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Research Products
(22 results)