2008 Fiscal Year Annual Research Report
網膜血管の恒常性維持機構の分子基盤解明と新規緑内障治療薬開発への応用
Project/Area Number |
20590090
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
中原 努 Kitasato University, 薬学部, 准教授 (10296519)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 麻美 北里大学, 薬学部, 助教 (80453504)
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Keywords | 薬理学 / 血管生物学 / 微小循環 |
Research Abstract |
本年度は「網膜虚血・再灌流による網膜血管の構造・機能的変化の分子基盤解明」のための実験を行い、次のような成果を得た。 (1)網膜虚血・再灌流の周皮細胞に及ぼす影響:ラット網膜において、4種類の周皮細胞マーカー(α-SMA, desmin, NG2, PDGFR-β)に対する抗体を用いて染色様式を比較した結果、NG2抗体が網膜血管の周皮細胞を検討するのに適していると考えられた。NG2抗体を用いて検討を行ったところ、網膜のNG2陽性細胞は、網膜虚血・再灌流2日後に増加し、その後7、14日と経過するのに伴い減少することが明らかになった。しかしながら、周皮細胞の減少は、内皮細胞のそれに遅れ、程度も小さいことから、内皮細胞が周皮細胞に先行して傷害される可能性が示唆された。 (2)網膜血管の構造的変化におけるVEGFの役割:ラット網膜におけるVEGF (vascular endothelial growth factor)産生細胞の分布と、それに対する虚血・再灌流の影響について免疫組織化学的に検討した。その結果、i)VEGFは視神経節細胞、ミュラー細胞、視細胞に強く発現していること、ii)網膜虚血・再灌流は、VEGFの免疫活性を、網膜血管の退縮に先行して、血管が分布している視神経節細胞層から外網状層においては低下させるが、血管が分布していない外顆粒層においては低下させないことが明らかとなった。また、iii)正常ラットの硝子体内にVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害薬(SU5416及びKRN633)を投与することにより、網膜表層部において毛細血管の一部が退縮することが明らかになった。以上の結果より、視神経節細胞により恒常的に産生・遊離されているVEGFが、網膜血管の構造維持に一部関与していることが示唆された。
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