2010 Fiscal Year Annual Research Report
微生物二次代謝産物を用いた分子標的癌治療薬の探索研究
Project/Area Number |
20590107
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Research Institution | Iwaki Meisei University |
Principal Investigator |
金 容必 いわき明星大学, 薬学部, 准教授 (70337997)
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Keywords | 乳がん / HIF-1α / 微生物二次代謝産物 / 低酸素 / 血管内皮増殖因子 |
Research Abstract |
乳癌に罹患するリスクは年齢と共に増加して、九十歳の女性の場合、その年齢までに乳癌に罹患した人の比率は12.5%であり8人に1人は罹患していることになる。これは女性の癌の中では胃癌を越え、現在は1位である。固形癌の代表である乳癌も例外ではなく低酸素応答転写因子であるHIF-1αの機能もって血管新生を行い低酸素の状態でも増殖している。したがって、HIF-1αの機能を制御できれば選択性の高い分子標的乳癌治療薬が誕生できる。さらに、最近は癌にかぎらず、高齢化に伴い増加の傾向である、心疾患、脳血管疾患も低酸素状態が原因で起こる疾患で、これらの疾患もHIF-1α機能抑制剤を利用して治療することが期待できる。このようなことからいわき周辺の土壌から3種類の特殊な分離培地を用いて糸状菌107種類を分離し、米をベースとした生産培地を用いて20日間、25℃で培養を行った。生産培地で培養された糸状菌を溶媒抽出して、低酸素条件下でHIF-1αの細胞内蓄積を阻害する活性を指標とし、活性を示したIMU-0051株を選択して様々な精製方法を用いて活性成分を3つ単離した。さらに、3つの成分について各種分析データの解析を行い、各成分はIsochaetochrominB_1、B_2および新規類縁体であることを明らかにした。活性および作用機序に関する解析はヒト乳癌由来T47D細胞、ヒト乳癌由来MCF-7細胞およびヒト子宮頸がんHela細胞を用いて解析を行い、すべての細胞において3成分は低酸素条件下でHIF-1αの細胞内蓄積および核内移行を阻害することを明らかにした。さらにこれら化合物と様々なシグナル伝達阻害薬を用いて作用機序の解析を行い、活性成分らはこれまで知られているシグナル伝達経路の阻害薬とは異なる抑制傾向であることを明らかにした。以上の結果から活性成分らのHIF-1αタンパク質の蓄積抑制作用には既存の経路を介さないことが明らかになり、作用機序には新しい経路の存在が強く示唆された。今後、これらの活性成分の作用機序が解析できれば、新しい作用機序を持つ抗がん分子標的薬の開発に結び付く可能性が高いと思われる。
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Research Products
(3 results)