2008 Fiscal Year Annual Research Report
特異な脂肪酸による神経細胞のプログラム細胞死に関する研究
Project/Area Number |
20590132
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
近藤 一成 National Institute of Health Sciences, 代謝生化学部, 主任研究官 (40270623)
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Keywords | アポトーシス / 脂肪酸 / AIF / MAPK / スギヒラタケ |
Research Abstract |
共役トリエン脂肪酸(eleostearic acid,ESA)およびそのメチルエステル体を用いてアポトーシス誘導メカニズムについて検討した。神経細胞株PC12,SH-SY5Y,NG108-15細胞に対して低濃度でアポトーシスを誘導した。そのメカニズムを解明するために,各種阻害剤を用いてその阻害効果を検討したところ,MAPKのひとつERKの阻害剤で強くアポトーシスが抑制されることが,また,カスパーゼ3/7の活性化が起こらないこと,AIF(a__-poptosis-i__-nducing f__-actor)がミトコンドリアから核に移行することが分かった。ウェスタンブロットでERKのリン酸化(活性化)が見られたが,カスパーゼ3の活性型のバンドは検出されなかった。一方,レーザー共焦点顕微鏡を用いたタンパク質局在について調べたところ,AIFは脂肪酸ESA刺激で核に移行すること,ERKもリン酸化に伴い核に移行することが判明した。さらに,総DNAを抽出し,パルスフィールド電気泳動で解析したところ,アポトーシスに典型的なDNA断片化は観察されなかったが,40-50kbase付近に,AIFによるものと考えられるDNA断片が見られた。同様のメカニズムで細胞死を起こす,MNNG(DNAアルキル化剤)やNMDA刺激を介した場合に見られる,AIF活性化に伴うPARP-1分子の活性化がESA刺激では見られず,同じカスパーゼに依存しないアポトーシスでありながらメカニズムは異なることが強く示唆される。以上の結果は,これまでには見出されていないアポトーシス経路がまだ存在することが考えられ,その機構を明らかにすることは,神経変性疾患治療の新たなターゼットとして有望なだけでなく,これまで原因の分からない神経変性の形成機構の理解に繋がる可能性を持つものと期待している。
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