2010 Fiscal Year Annual Research Report
特異な脂肪酸による神経細胞のプログラム細胞死に関する研究
Project/Area Number |
20590132
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
近藤 一成 国立医薬品食品衛生研究所, 代謝生化学部, 主任研究官 (40270623)
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Keywords | アポトーシス / 共役トリエン脂肪酸 / AIF / PARP / ERK/MEK / スギヒラタケ |
Research Abstract |
共役トリエン脂肪酸(eleostearic acid, ESA)のアポトーシス誘導メカニズムについて,cytochrome-cやBaxのミトコンドリアへの局在,DNA損傷やPARP-1の活性化を伴わなずにAIFのミトコンドリアからの遊離とそれに続く核移行を誘導する,これまでにない作用機構で進行する非カスパーゼ依存性細胞死であることを明らかにしてきた。今年度は,AIFの遊離を誘導する分子が何であるかを突き止めるために細胞死関連分子について検討した。Death-associated protein kinase (DAPK)は,セラミド刺激など細胞死刺激により活性化されるキナーゼである。WTおよびkinase-dead DAPK-K42Amutantを用いた実験からESA刺激による細胞死にはDAPKは関与しないと考えられた。また,ミトコンドリア分裂が細胞死を誘導する因子の放出を促進することがこの細胞死に関与しているかを調べた。Drp1の阻害剤Mdivi-1およびDrp1に対するsiRNAを用いた検討から,分裂阻害により長くつながったミトコンドリアが確認されたがESA刺激による細胞死を阻害しなかったことから,ミトコンドリア分裂の抑制も重要ではないことが判明した。さらに,Cyclophilin Aやリン酸化histone-H2AXの核でのAIFとの共局在化が必須と報告されていたことから検討したが,Cyclophilin A siRNAにおいても細胞死阻害効果が認められず,またESA刺激ではリン酸化histone-H2AXそのものが観察されなかった。また,細胞質および核に局在化するAIFのdeletion mutantであるΔN102AIF-GFPを発現させて同様の検討を行った。その結果,ESA刺激しない条件での実験からΔN102AIF-GFPの強い核移行およびCyclophilin Aの局在化にも関わらず細胞死は見られず,ESA刺激が必要であった。以上の結果から,ESAにより誘導される細胞死はカスパーゼ非依存的であるだけでなく,これまで必須と考えられてきたcyclophilin-AやH2AXリン酸化およびPARP-1の活性化が一切必要ではない新しいメカニズムで進行していると考えられた。どのような分子がcritical factorであるかさらに検討中である。
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