2010 Fiscal Year Annual Research Report
妊娠の進行に伴う胎盤の組織変化と生体必須物質透過性との関連
Project/Area Number |
20590136
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
平野 剛 神戸大学, 医学部附属病院, 准教授 (00322826)
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Keywords | 妊娠 / 胎盤 / 胎児移行性 / 栄養素 / トランスポーター / グルタミン / SNAT3 / 飲酒 |
Research Abstract |
1 グルタミン輸送担体(SNAT3)およびグルタミン合成酵素(GS)に及ぼす薬剤感受性の評価 バルプロ酸の妊婦への投与は原則禁忌とされているが、治療上の有益性が危険性を上回ると判断された場合、妊婦にも投与されることがある。妊娠中のバルプロ酸服用の副作用として、胎児の発育不全や精神発達遅延が報告されているが、その詳細な機序は不明である。そこで、単離したヒト胎盤cytotrophoblast cellをバルプロ酸含有メディウムにて播種・培養した。バルプロ酸曝露群では、播種1日後におけるhCGの分泌量は同程度であったにも関わらず、SNAT3とGSの発現は減少することが示された。SNAT3とGSが担うGlu-Glnサイクルの総合的な機能抑制は、胎児へのグルタミン供給の阻害のみならず、アンモニアやグルタミン酸を胎児血中に蓄積させる一因になり得ると考えられる。一方、播種3日後のhCG分泌量は著しく減少し、妊娠初期のバルプロ酸服用は胎盤形成に障害を与えることが示唆された。これらの結果より、バルプロ酸による胎児発育不全・精神発達遅延には、GSとSNAT3抑制によるアンモニア蓄積と胎盤形成の遅延が関与していることが示唆された。 2 ヒト胎盤細胞におけるグルタミン輸送担体SNAT3に及ぼすエタノールおよびアセトアルデヒドの影響 妊娠初期モデルとしてBeWo細胞を用い、エタノールおよびアセトアルデヒドを一定時間曝露した。その結果、SNAT3はエタノール濃度に依存して増加し、胎児側に存在するy+LAT1とASCT2は減少することを明らかにした。さらに、エタノール曝露群においては、ナトリウム依存的な能動輸送部分の取り込み増加が認められた。以上の結果から、グルタミンが細胞内に滞留することが推察され、妊娠初期の飲酒は胎児へのグルタミン供給不足や胎盤の障害を招くことが示唆された。
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Research Products
(6 results)