Research Abstract |
多くの動物は,例えば昆虫で明らかなように,分節を単位として構成され,その分節ひとつひとつが異なることによって多様な形態が生み出されている.脊椎動物もその例にもれない.本研究が対象としている中軸骨格は椎骨と肋骨からなっており,ほ乳類や鳥類においては,肋骨が胸部に限局して形成される.椎骨も肋骨も胚発生の最も初期に現れる分節構造である体節中胚葉に由来し,形態上全く異なるところのない体節が,発生の進行とともに,部域ごとに異なった形態をうみだすのである.肋骨は,発生的に3つの区画に分けられ(Aoyamaら, 2005, lnt. J. Dev. Biol),正中に近い方から,近位部,遠位部椎骨部,遠位部胸骨部となる.遠位部は肋骨の大部分を占めるものであるがこれは表皮外胚葉に依存して形成される.本研究の目的は,肋骨形成の部域による違いについて体節と表皮外胚葉の相互作用に焦点を当て,その実体を明らかにしようとするものである. LiemとAoyama (2009, Mech. Dev.)は,遠位部椎骨部,遠位部胸骨部が,最近Ann Burkにより提唱された,体壁の発生的区画でいえば,それぞれ主軸部,側軸部に属することを明らかにした.これは,異所的な四肢形成によって肋骨の遠位部胸骨部の形成のみが抑制されしかもその細胞は四肢の形成に加わっていたことから示された.この結果は,個体発生における肋骨形成機構のみならず,系統発生における胸部と腹部の分化の機構についても示唆を与えるものである. 肋骨遠位部形成に表皮外胚葉が必要であることは,表皮と体節との相互作用を遮断すると,肋骨は,椎骨の近くの部分のみ形成されることから示された.表皮外胚葉由来の分泌因子としてWntファミリーの遺伝子産物,その受容体としてFrizzled群が,また,その阻害因子としてFrzbが想定される.現在,各遺伝子をクローニングしているところであり,今後,それぞれの発現パターンを明らかにし,さらに強制発現/阻害実験によりその機能を検証する予定である.
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