2010 Fiscal Year Annual Research Report
脳脊髄液減少症の発症機序と硬膜外ブラットパッチの有効性に関する形態学的解析
Project/Area Number |
20590173
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
三浦 真弘 大分大学, 医学部, 講師 (50199957)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
紀 瑞成 大分大学, 医学部, 助教 (60305034)
内野 哲哉 大分大学, 医学部, 助教 (70423697)
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Keywords | 脳脊髄液減少症 / 自己静脈血注入療法 / 髄液漏出 / 脈管外通液路 / 脳脊髄液側副吸収 / 硬膜外リンパ系 / カニクイザル / 形態学的解析 |
Research Abstract |
平成22年度の研究実施計画項目とそれらの研究成果について以下に列挙する。 1 CSF側副吸収亢進ならび漏出髄膜部の同定と硬膜外リンパ系(以下ELS)との関連性の最終検討:生理的CSF側副吸収路の局在(髄膜-神経根移行部:クモ膜反転部)を形態学的に明らかにするとともに、正常髄液漏出と異常髄液漏出において中枢神経系の脈管外通液路を形成する構造拡張やその破綻が密接に関与することを明らかにした。 2 腰仙髄領域の髄膜-神経根部における髄液漏出・吸収亢進の可能性検討:臨床上髄液漏出が造影MRI検索において顕著に出現すると考えられている腰髄領域の形態学的解析では、頸髄領域に発達するような硬膜外リンパ管網ならびに硬膜-神経根移行部での脈管外通液路の形成は極めて不全であることから、画像診断所見と形態学的所見との間の漏出現象を裏付ける構造的根拠を見出すことはできなかった(髄液漏出画像の真偽については今後精査が必要)。 3 胎児(新生児)と成人髄膜における脈管外通液路に関る構造的特徴の違い(クモ膜顆粒発達状況との関係):胎児では脳硬膜クモ膜顆粒が発達不全である一方で、頸髄硬膜背面に位置するELSの発達は成人のそれと比較すると顕著であり、しかも硬膜-神経根移行部には篩状斑様の脈管外通液路が発達することから、胎児におけるCSF圧調節には脊髄レベルでの前リンパ管通液路(pre-lymphatic channel:以下PLC)の果たす役割が大きいことが示唆された。 4 EBPの形態学的有効性の再検討(腰椎穿刺注射針に起因する髄液漏出含む):インジコカルミンならびにCH40水溶液をトレーサーとする注入実験では、EBP群と非EBP群においてELSを介するCSF経リンパ管側副路への吸収速度はやや非EBP群で優位であった。しかし、電顕的・組織学的検索では硬膜外リンパ管網ならびにCSFの生理的漏出部位(PLC構造)に対して血液パッチが直接漏出関連構造を制御できる形態学的状況には至らなかったと判断された。
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