Research Abstract |
近年,膜ドメインを利用して細胞内に侵入するウイルス報告例が増えている.本研究の全体構想としては,このような“膜ドメイン指向性"ウイルスを利用して,『多重蛍光標識ウイルスプローブ』を作製し,膜ドメインの新たな機能を探ることを目的とする.全体構想における本研究の位置づけは,(1)ウイルスを載せたラフトの,カベオラやタイトジャンクションへの“走化性"的滑走現象の詳細を明らかにすること,(2)その後ウイルス侵入に利用されるカベオラ膜輸送の詳細を明らかにすることにある.このうち,今年度は,(1)に関連して,蛍光標識コロナウイルスを作製するための各種培養細胞作製を精力的に推進でき,またタイムラプスイメージング手法により,ウイルスレセプター分子のカベオラへの滑走を生細胞にてとらえることができた.詳細は以下の通り. 1.多重蛍光標識コロナウイルスの作製 (1)各種蛍光ウイルスタンパク質発現細胞を多数作製し,ウイルス産生効率を決定した. (2)エンベロープ脂質を標識するための条件を検討中. (3)S-protein, E-proteinに対するペプチド抗体を計5種類作製し,蛍光抗体法,ウエスタンブロット法による評価を終えた. 2.細胞膜ドメインの滑走機構を解析 (1)ウイルスレセプター(CD13)を,生細胞上で抗体にて架橋し,その動態をタイムラプス解析したところ,CD13の滑走様式として,(1)細胞膜上を流れのような動きで滑走し,クラスターを形成すること,(2)合流するクラスターが存在すること,(3)クラスター形成が起こりやすい場所が存在するといった所見が得られた.これらの結果から,細胞骨格系とCD13の動態がリンクしている可能性が示唆された.
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