2008 Fiscal Year Annual Research Report
腸神経細胞死とヒルシュスプルング病の発症機序に関する個体レベルの研究
Project/Area Number |
20590204
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
上坂 敏弘 The Institute of Physical and Chemical Research, 神経分化・再生研究チーム, 研究員 (90304451)
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Keywords | RET / Bcl-xL / ヒルシュスプルング病 / 腸 / 神経細胞死 / 疾患モデルマウス |
Research Abstract |
本研究の基盤となるヒルシュスプルング病モデルマウスの作製の成果が認められ、米医学誌『Journal of Clinical Investigation』に掲載された。ヒルシュスプルング病の原因遺伝子であるRetの発現レベルを通常の約30%に抑えることで、ヒルシュスプルング病の特徴とよく類似した表現形を示すことが明らかとなり、さらに腸神経堤細胞の移行の遅延や細胞死が大腸遠位部の腸神経節の欠損の原因である可能性が示唆された。さらに興味深いことに、我々はRetと受容体複合体のGFRalのダブルヘテロミュータントマウスを見てみると、モデルマウスと同様な腸神経堤細胞の移行の遅延が認められたにもかかわらず、大腸遠位部の腸神経節の欠損は一例も認められなかった。このことから、細胞移行の遅延だけでは発症には至らず、RETシグナルの減少に伴う細胞死が主な発症の原因と考え、これを証明するためにまず細胞死を抑える条件を検討した。Retの遺伝子座に、初代培養条件下で腸神経細胞のRETシグナルの不活性化による細胞死を抑制するBel-xL元をノックインして腸神経堤細胞および神経細胞にBcl-xLを過剰に発現するマウスを作製した。このBcl-xLの過剰発現により、Retの条件的不活性化による腸神経細胞死が抑制された。現在、Bcl-xLの過剰発現が腸神経堤細胞の移行には影響しないことを確認し、Bcl-xLによって細胞死を抑えることでモデルマウスにおけるヒルシュスプルング病に類似した疾患が抑えられるかどうか検討を始めている。
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