2009 Fiscal Year Annual Research Report
腸神経細胞死とヒルシュスプルング病の発症機序に関する個体レベルの研究
Project/Area Number |
20590204
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
上坂 敏弘 The Institute of Physical and Chemical Research, 神経分化・再生研究チーム, 研究員 (90304451)
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Keywords | Ret / Bcl-xL / ヒルシュスプルング病 / 腸神経系 / 細胞死 / 神経堤細胞 |
Research Abstract |
神経栄養因子GDNF不足による腸管ニューロンの細胞死は従来のアポトーシスとは異なること示唆する報告をした。多くの発生過程の神経系で神経栄養因子不足による細胞死はアポトーシス誘導因子のBax遺伝子の欠損によって抑えられるが、GDNF不足による腸管ニューロンの細胞死は抑えられないことを今回改めてin vivoで確認した。この従来のアポトーシスとは異なる細胞死がRetの遺伝子座にBcl-xLをノックインさせて腸神経前駆細胞並びに腸管ニューロンにおいてBcl-xLの発現を高めることで抑制されることが昨年の研究から明らかになってきた。腸管末端部の腸神経節の先天的な欠損を特徴とするヒルシュスプルング病の主な原因遺伝子はGDNFの受容体複合体の一つであるRETチロシンキナーゼであり、我々はRetの発現低下によりヒルシュスプルング病とよく類似した症状を呈することをマウスモデルで示している。今回は、このモデルマウスを用い、Retの発現低下による腸神経節の消失が、従来考えられているように腸神経堤細胞の移行の異常が主な原因であるのか、それとも細胞死によるのかを明らかにするために、Ret-Bcl-xLマウスと掛け合わせることで細胞死を抑えることを試みた。その結果、神経堤細胞の移行の遅延は改善されないにもかかわらず、腸神経節欠損の症状が抑えられたことから、Ret発現レベルの減少による腸神経節の欠如は、細胞死が主な要因であることが示唆された。本研究の成果はヒルシュスプルング病の発症機序を解明する上で重要な知見を与えるものであり、今後、新たな治療法の開発にもつながる重要なデータであると考える。
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Research Products
(1 results)