2010 Fiscal Year Annual Research Report
腸神経細胞死とヒルシュスプルング病の発症機序に関する個体レベルの研究
Project/Area Number |
20590204
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
上坂 敏弘 独立行政法人理化学研究所, 神経分化・再生研究チーム, 研究員 (90304451)
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Keywords | Ret / Bcl-xL / ヒルシュスプルング病 / 細胞死 / 腸管ニューロン / 神経堤細胞 |
Research Abstract |
我々はこれまでにRet遺伝子の発現低下により腸管ニューロン前駆細胞の移行の遅延と細胞死が生じ、これにより腸管下部の神経節の欠損に陥ることをヒルシュスプルング病の疾患モデルマウスでみてきた。さらにRet遺伝子座にRETシグナルの低下による細胞死を抑えるBcl-xLをノックインさせたマウスを作製し、個体レベルで細胞死を抑える系を確立した。この系を用いてヒルシュスプルング病モデルマウスにおいて細胞死を抑制したところ、神経堤細胞の移行の遅延は改善されないにもかかわらず、腸神経節欠損の症状が51例中50例においてほぼ完全に抑えられた。この結果は、細胞死がヒルシュスプルング病の発症の主な要因であることを初めて示すものであり、新たな治療法開発に向けて重要なターゲットであることを示した。さらにRET欠損による細胞死を抑える条件下で、RETシグナル欠損の影響を観察したところ、腸管筋層を抑制性に支配する運動ニューロン(nNOS陽性ニューロン)が有意に減少していたことこら、nNOS陽性ニューロンの分化にRETシグナルが必須であることが明らかになった。この成果をJournal of Neuroscience誌に報告した。RETシグナルを欠くことによる細胞死を個体レベルで抑える系の確立により、ヒルシュスプルング病の発症機序だけでなく腸管神経系の発生過程におけるRETシグナルの新たな役割も明らかになり、今後の展開につながる意義ある研究となった。
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Research Products
(1 results)