2008 Fiscal Year Annual Research Report
マウスES細胞由来心筋細胞の分化成熟過程における分岐構造の非線形力学的解析
Project/Area Number |
20590220
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
倉田 康孝 Kanazawa Medical University, 医学部, 准教授 (00267725)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芝本 利重 金沢医科大学, 医学部, 教授 (90178921)
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Keywords | 非線形力学 / 生物・生体工学 / 生物物理 / 生理学 / 再生医学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、マウス胚性幹(ES)細胞由来心筋細胞の分化成熟過程における分岐構造を解析することにより発生過程での心筋自動能発現制御機構を解明することであり、平成20年度(初年度)の目標は、電気生理学的実験データを基に、マウスES細胞由来心筋ペースメーカー(分化早期洞結節型)細胞の非線形力学系モデルを完成させることであった。 マウス・ウサギ成体洞結節細胞及びマウスES細胞由来洞結節型細胞から得られたイオンチャネル電流の動態を比較解析した結果、(1)各イオンチャネル電流系の膜電位依存性キネティクスに本質的な違いはないが、各々のコンダクタンスは分化成熟に伴って経時的に変化し、その過程はイオンチャネルの種類によって異なること、さらに(2)成体の洞結節細胞に比べてNa^+チャネル電流密度が相対的に高いことが明らかとなった。これらの実験結果を基に、成体洞結節細胞モデルにおける各イオンチャネルの最大コンダクタンス値を調整し、マウスES細胞由来心筋ペースメーカー(分化早期洞結節型)細胞の電気生理学的特性を再現する力学系モデル(連立非線形常微分方程式)を構築することができた。科学技術計算ソフトウェア(MATLAB)を用いて、(1)活動電位の再構成及びそのダイナミクス(活動電位パラメータ)の計算、(2)活動電位波形のパラメータ依存性変化の計算・プロットのための解析システム(プログラム群)を作成し、自発性活動電位波形とその各イオンチャネル電流抑制時における変化をコンピュータ・シミュレーションにより解析して、本モデルが実験データを十分に再現できることを確認した。さらに、本モデル細胞の分岐構造(過分極負荷による自動能の変化など)を解析するためのMATLABプログラムを完成させることができた。これらの非線形力学系モデルと分岐構造解析システムは、最終目標である“発生過程における心筋自動能発現制御機構の解明"を達成する上で最も重要かつ不可欠である。
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