2009 Fiscal Year Annual Research Report
心・肺機能の神経性調節:低酸素下で生き延びる機構を探る
Project/Area Number |
20590242
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
白井 幹康 National Cardiovascular Center Research Institute, 心臓生理部, 部長 (70162758)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
曽野部 崇 国立循環器病センター研究所, 心臓生理部, 流動研究員 (70548289)
稲盛 修二 広島国際大学, 保健医療学部・臨床工学科, 講師 (60412334)
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Keywords | グレリン / 心臓交感神経 / 不整脈 / 低酸素性肺高血圧 / 放射光 / マウス肺血管造影 |
Research Abstract |
本年度は、近年、自律神経調節能を持つペプチドとして注目されているグレリンの低酸素・虚血時の心・肺応答に対する効果に焦点を当てた。新しい研究成果は以下の通りである。 1.ラット急性心筋梗塞モデルに対してグレリンを皮下投与し、自律神経調節を介した心臓保護作用を調べた。その結果、冠動脈閉塞直後から心臓交感神経の電気活動は増大したが、同時にグレリンを皮下投与すると、この神経活動増大は完全に消失した。このときグレリンは、閉塞後の不整脈の発生回数及び不整脈による死亡を有意に減少させた。以上より、グレリンは急性心筋梗塞時の交感神経緊張増大による不整脈死の発生率を低下させる効果を有することが示唆された。2.ラット肺高血圧モデルに対するグレリン皮下投与の肺循環降圧効果を、血管形態と機能の両面から評価した。2週間、ラットに低酸素の連続負荷と毎日1回の生理的食塩水(対照)あるいはグレリン皮下投与を行い、両者を比較した。グレリン投与により、肺動脈圧は有意に減少し、右心室肥大や肺細動脈の平滑筋肥厚はほぼ正常化しな。また、肺高血圧の促進因子であるエンドセリン1の遺伝子・タンパク発現増大や肺血管反応性増大もほぼ完全に正常化した。以上より、グレリンは肺高血圧症の進展を抑制する効果を有することが分かった。3.SPring-8放射光高速微小血管造影法を麻酔下マウスに応用し、右心室に挿入した自作カテーテルより特殊注入ポンプで造影剤を注入するin vivoマウス右心室系の可視化技術を開発した。右心室から肺動脈幹、肺葉動脈、肺小動脈、肺細動脈(100μm径)、肺静脈、左心室までの内腔の描出及び造影剤の流れがクリアーに描出できた。将来、この技術のグレリンKOマウスへの応用により、右心室系循環障害の分子機構研究が進むものと期待される。
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