2010 Fiscal Year Annual Research Report
心・肺機能の神経性調節:低酸素下で生き延びる機構を探る
Project/Area Number |
20590242
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
白井 幹康 独立行政法人国立循環器病研究センター, 心臓生理機能部, 部長 (70162758)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
曽野部 崇 独立行政法人国立循環器病研究センター, 心臓生理機能部, 流動研究員 (70548289)
稲盛 修二 広島国際大学, 保健医療学部・臨床工学科, 講師 (60412334)
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Keywords | グレリン / ムスカリン性アセチルコリン受容体 / 低酸素 / 睡眠時無呼吸症候群 / 肺高血圧 / 交感神経 / βアドレナリン受容体 / Rho-kinase |
Research Abstract |
本年度は、自律神経調節能を持つグレリンの低酸素時換気応答での役割および心臓ムスカリン性アセチルコリンM_2受容体の運動初期心拍応答での役割を、遺伝子改変マウスを用いて調べた。また、睡眠時無呼吸症候群(SAS)および肺高血圧症のラットモデルを作製し、交感神経系の肺高血圧進展抑制作用およびRho-kinaseの高血圧促進作用について調べた。 1. グレリンKOマウスと対照マウスの慢性低酸素負荷後の急性低酸素に対する換気応答を比較した。対照では慢性低酸素負荷により急性低酸素応答が減少したが(呼吸順応)、KOマウスでは、減少しなかった。この結果より、グレリンは低酸素環境下呼吸順応の調節因子であることが示唆された。 2. M_2受容体KOマウスに心電図送信器を植え込み、運動初期の心拍応答をテレメトリー計測した。対照と比較して応答の大きさや立ち上がり速度に差はなかった。KOでの応答はβアドレナリン受容体阻害薬で消失した。従来、運動開始初期の心拍応答は、迷走神経活動の減弱によって起こると考えられてきたが、この結果は、交感神経性因子も重要であることを示唆した。 3. ラットに5%02と20%02を3分ごとに繰り返す間歇的低酸素(IH)を1日8時間、4週間に渡って負荷してSASモデルを作製した。また、慢性低酸素負荷で肺高血圧症を作製した。SASモデルでは対照に比べ低酸素性肺血管収縮応答は減弱していたが、β受容体阻害下では、逆に対照より増強しており、重大な肺高血圧症に進展した。SASでは交感神経系を介したβ性肺血管拡張作用の賦活によって肺循環が維持されていることが示唆された。また、低酸素性肺高血圧ラットにRho-kinase阻害剤を投与すると、多くの肺細動脈の再開通が見られた。血管平滑筋のRho-kinase活性亢進を介したスパズム的な肺細動脈の強収縮が、肺高血圧進展で極めて重要であることが示唆された。
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