2010 Fiscal Year Annual Research Report
心肥大における心筋代謝機能とその制御分子に関する研究
Project/Area Number |
20590257
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
泉 康雄 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 准教授 (10347495)
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Keywords | 心血管 / 代謝機能 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
カニクイザルにエピネフリンを反復投与することにより、「たこつぼ型」心筋症に極めて類似した心不全モデルを作製することに成功した。げっ歯類(ラット・マウス)にエピネフリンを反復投与してもこのモデルは作製することができない、極めて興味深いモデルである。一過性の心機能低下後、自然軽快することもしばしばあるが、交感神経β受容体遮断薬(メトプロロール)の単回投与で、心機能の回復を早めることを見いだした。壁運動低下をほとんど認めない左室基部、壁運動低下の著しい心尖部およびその中間部のRNAを抽出し、網羅的な遺伝子解析を行った。 まず、正常(未刺激)群の左室において、基部に比べ、心尖部に向けて特異的に発現している遺伝子群としてはMAPキナーゼ経路、Wnt経路、TGF-β経路、カルシウム関連遺伝子などが認められた。正常左室心尖部で特異的に発現し、かつ、エピネフリン投与により特異的に変動する遺伝子としては、カルシウム関連遺伝子(ADCY7, PDE1A, P2RX4など)やレニン・アンジオテンシン系遺伝子(AGTR1など)が認められた。メトプロロール投与にて、エピネフリンによるADCY7の遺伝子発現増加は抑制され、ミトコンドリア機能に関連するPGC-1αやTFAMの遺伝子発現も改善傾向を示した(有意差はなし)。本研究は、メトプロロール単回投与のみのため、メトプロロールの心機能改善作用の詳細な機序については明らかにできなかった。本モデルは、たこつぼ型心筋症あるいは心不全に対するβ受容体遮断薬療法の薬理機序を明らかにする上で重要なツールとなると考えられる。
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