2010 Fiscal Year Annual Research Report
神経細胞における新たなグルタチオン産生調節機構の解明
Project/Area Number |
20590261
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
青山 晃治 帝京大学, 医学部, 講師 (00420943)
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Keywords | グルタチオン / GTRAP3-18 / EAAC1 / 神経変性疾患 |
Research Abstract |
Alzheimer病(AD)やParkinson病(PD)は加齢に伴い発症する神経変性疾患であり、高齢化社会においては今後、患者数の増加が予想される疾患である。AD、PD患者の脳組織では、酸化ストレスの亢進、抗酸化物質グルタチオン(GSH)の減少が報告されているが、その意義および機序については明らかではない。近年、神経細胞に存在するグルタミン酸トランスポーターの一つであるEAAC1が、GSH産生に必要なシステインの取り込みに関与することが報告された。EAAC1の機能は細胞膜上の発現量に依存しているため、細胞膜上へのEAAC1の輸送を促進することが重要である。EAAC1の結合蛋白であるGTRAP3-18は、小胞体蛋白質の一つであり、EAAC1を小胞体内にとどめる働きを担っている。我々の培養細胞での研究から、GTRAP3-18の発現を抑制すると細胞内GSH量が増加することが明らかになった。しかし、これまでに動物モデルを用いたGTRAP3-18のGSH産生調節についての報告はなかった。In vivoにおけるGSH産生調節機構を明らかにするため、EAAC1およびGTRAP3-18を標的蛋白としたsiRNAを、それぞれマウス側脳室内に7日間持続投与した。海馬においてsiRNAによる標的蛋白の発現減少を免疫染色法およびウェスタンブロット法により確認した。海馬GSH量はEAAC1の発現量減少により有意に減少した。一方、GTRAP3-18の発現量減少は、海馬GSH量を有意に増加させた。メチルβサイクロデキストリンの5日間側脳室持続投与により、海馬におけるGTRAP3-18の発現量、およびEAAC1との結合量は増加しGSH量は減少した。以上の結果から、海馬神経細胞のGSH量はEAAC1を制御しているGTRAP3-18によって調節されていることが、動物実験によっても証明された。EAAC1およびGTRAP3-18は神経細胞に選択的に発現している蛋白質であり、GSH量の増加は神経細胞に由来するものと思われる。GTRAP3-18を抑制することにより内在的に神経細胞内のGSH量を増加させることができれば、神経変性疾患の治療につながる可能性が期待されうる。
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