2010 Fiscal Year Annual Research Report
虚血性臓器障害と交感神経:エンドセリンおよびアンジオテンシン系の役割と性差
Project/Area Number |
20590266
|
Research Institution | Osaka University of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
松村 靖夫 大阪薬科大学, 薬学部, 教授 (40140230)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大喜多 守 大阪薬科大学, 薬学部, 講師 (60449824)
|
Keywords | 虚血障害 / 交感神経 / ノルエピネフリン / 性差 / エストラジオール / 卵巣摘除 |
Research Abstract |
前年度までの2年間において、研究計画の第一の目的である心虚血に伴うノルエピネフリン(NE)過剰放出と心機能不全の発現におけるアンジオテンシンIIとエンドセリン-1の役割について検討し、一定の成果を得るとともに論文報告も行った。最終年度である本年は、虚血後心筋の心機能障害とNE過剰放出における性差について検討した。 雄の心臓では、虚血再灌流により、最大左心室圧と左心室圧一次微分値の低下並びに左心室拡張末期圧の上昇が観察された。また、再灌流後の灌流液に含まれるNE量は顕著に増大した。これに対し雌の心臓では、雄の心臓と比較して障害は軽度であり、NE量は低値を示した。次に卵巣摘除(OVX)処置を行った雌の心臓についても同様の検討を行った。その結果、OVX処置を施した群では、無処置群と比較して虚血再灌流後のNE放出量は増大し、心機能は有意に低下した。さらに女性ホルモンの一種である17β-estradiol (E_2-β)投与の影響について検討を行った。雄のE_2-β急性処置および慢性投与群並びに雌にOVXを施した後にE_2-βを慢性投与した(OVX+E_2-β)群では、NE放出は抑制され、心機能は著しく改善した。この甑放出量の低下に一酸化窒素(NO)が関与しているのではないかと考え、非選択的NO合成酵素阻害薬であるN^G-nitro-L-arginine(NOARG)を用いて検討した。E_2-β急性処置および慢性投与群並びにOVX+E_2-β群にNOARGを処置することで、各群で認められた心機能障害改善効果は消失した。また、灌流液中に含まれるNOx量を測定した結果、雄と比較して雌の心臓でNOx量の増大が観察された。E_2-βの急性処置や慢性投与によってもNOx量は増大し、この増大はNOARGを処置することで消失した。 以上のことから、虚血再灌流後の心機能、NE放出量には雌雄差が存在し、その雌雄差には性ホルモンの一種であるエストロゲンが深く関与していることが明らかとなった。また、その性差発現のメカニズムには、エストロゲンによるNO産生の亢進を介したNE過剰放出抑制作用が関与していることが示唆された。
|