2008 Fiscal Year Annual Research Report
癌浸潤並びに血管新生に共通に関わる分子装置の解析及び阻害剤開発に関する研究
Project/Area Number |
20590293
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Research Institution | Osaka Bioscience Institute |
Principal Investigator |
橋本 あり Osaka Bioscience Institute, 分子生物学部門, 研究員 (60390803)
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Keywords | 血管新生 / 癌浸潤 / Arf6 / AMAP1 / ArfGEF / 乳癌 / チロシンリン酸化 / 乳腺 |
Research Abstract |
本研究は、癌浸潤に特化した分子Arf6、AMAP1、GEP100が血管新生においても重要な役割を担う共通のシグナルであること、また、どのような分子機序で血管新生に関与しているのかを明らかにし、より効果的な癌浸潤阻害剤の開発に繋がる知見を提示することを目的としている。申請者は、低分子量Gタンパク質Arf6を中心とした浸潤に特化された分子装置の同定とそれらの蛋白質複合体形成のインターフェース構造に基づく癌細胞の浸潤・転移の特異的阻害剤の研究・開発を進めている。本研究期間では、以下の研究成果を得た。 1.血管新生におけるArf6、AMAP1、GEP100の機能解析 ヒト血管内皮細胞において、血管内皮増殖因子VEGF(vasucular endotherial growth factor)の刺激によってArf6が活性化されること、Arf6の活性化はGEP100を介していることを明らかにした。さらに、VEGF刺激によってチロシンリン酸化されるVEGFR-2のリン酸化サイトの中でも、951番目のチロシンリン酸化を介してGEP100-Arf6-AMAP1シグナルが活性化されることを見いだした。GEP100、Arf6、AMAP1各々の発現抑制や、AMAP1とcortactin複合体形成の阻害は、血管内皮細胞のin vitroのtubular formation及び、マウス個体を用いたin vivo angiogenesisを阻害する結果を得ている。以上のことから、GEP100-Arf6-AMAP1シグナルは癌細胞の浸潤だけでなく、血管新生においても関わる共通のシグナルであることが分かった。血管新生のどのような現象にGEP100-Arf6-AMAP1シグナルが関与しているか、現在解析を行っている。 2.臨床標本を用いた妥当性の検討 ヒト乳癌の病理検体を用い、GEP100の発現がヒト浸潤性乳管癌の約80%に観察されることを見いだした。また、皮膚の炎症部位の血管新生が誘導されている箇所においても、GEP100及びAMAP1の発現を確認した。これらの結果は、培養細胞で得られた知見が、病理組織でも反映されており、創薬標的としての可能性を強く示唆するものである。
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Research Products
(9 results)