2008 Fiscal Year Annual Research Report
エピジェネティクスと染色体ダイナミクスによる対立遺伝子排除の制御機構
Project/Area Number |
20590298
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
縣 保年 Kyoto University, 医学研究科, 准教授 (60263141)
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Keywords | 遺伝子発現 / 転写因子 / クロマチン / エピジェネティクス / 対立遺伝子排除 |
Research Abstract |
申請者は、抗原受容体遺伝子再構成の分子機構に関して研究を行ない、E2A転写因子が組換え部位に直接結合し、ヒストンアセチル化を上昇させ組換えを誘導することを見出した。さらに片方の染色体で機能的な組換えが成功し、負の抑制シグナルが伝達されると、E2Aの抑制因子であるId3が誘導され、E2Aが組換え部位から解離することによってもう一方のアレルでの組換えが抑制されること(対立遺伝子排除)を明らかにした。 一方、最近の研究から、組織特異的な遺伝子の発現にはエピジェネティックな情報変化に加え、染色体や遺伝子の核内配置やそのダイナミクスが重要であることがわかりつつある。そこで本研究では、遺伝子再構成の分子機構に関してエピジェネティクスに加え、染色体ダイナミクスの観点からも検討を加えることにより、E2Aがヒストンアセチル化に代表されるエピジェネティクスと、遺伝子座の短縮や伸展といった染色体ダイナミクスをどのように制御しているか明らかにすることを目的とする。 3次元構造の維持された核内で染色体領域を可視化する3D-FISHによりTCRβ遺伝子座の伸縮状態を解析し、染色体上に離れて存在するV領域とDJ領域をE2Aがルーピングによって接近させる可能性を検討した。その結果、これらの領域は組換えが起きる段階で接近し、組換えが抑制されると離れること、さらに組換えが抑制される段階でもE2Aを過剰発現させると両遺伝子領域が接近し、組換えが誘導されることを見出した。さらにヒストン脱アセチル化酵素阻害剤TSAの存在下でE2Aの過剰発現を行なうと、TSA非存在下に比べて顕著に組換えが促進された。この結果は、TSAとE2Aが協調的に作用することを示唆する。そこでこれらの状況におけるヒストンアセチル化と染色体ダイナミクスの依存関係や相互作用についてさらに解析を行なっている。
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Research Products
(1 results)