2010 Fiscal Year Annual Research Report
プロトン感知性Gタンパク質共役型受容体TDAG8による生体制御
Project/Area Number |
20590305
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石井 聡 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (10300815)
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Keywords | LLC細胞 / フーロトンセンサー / 癌 |
Research Abstract |
細胞外pH感知性受容体TDAG8はGタンパク質共役型受容体の一種である。細胞外pHの低下に伴い活性化されて細胞内でcAMP産生を促すことは、我々は既に論文報告している.(Ishii, S., et al.J.Biol.Chem.280,9083-9087)。また本研究では前年度までに、マウス肺ガンLLC細胞にTDAG8を安定発現させるとマウスの肺や皮下での腫瘍形成が促進されることを明らかにしている。そこで本年度は、pH感知機能を著しく減弱する変異TDAG8をLLC細胞に安定発現させ、その細胞の性質を野生型TDAG8発現細胞のものと比較した。TDAG8変異体は1つまたは2つのヒスチジンを変異させて得られたものであり(H10/14FとH243N)、これら2種類の変異体におけるpH感知機能の減弱はLLC細胞に発現させた状態でcAMP産生試験によって確認した。実験の結果、変異TDAG8を発現するLLC細胞はin vitroで低pH培養条件下での増殖能力が低下することが明らかとなった。in vivoでは腫瘍形成能が大きく減弱するとともに、マウスの生存期間が延長することが示された。今回観察した結果を前年度までの結果と総合すると、酸性状態において活性化されるTDAG8が、細胞増殖亢進と密接に関連して腫瘍形成の進展に深く関わることを強く示唆している。また、腫瘍内では細胞から放出された乳酸などの産生代謝産物によって細胞外pHが酸性に傾いている可能性も併せて示唆された。TDAG8が細胞外pHセンサーとして増殖に重要な役割を果たしている腫瘍細胞の場合、TDAG8を標的とするアンタゴニストや抗体が病態の進行を食い止めることができるかもしれない。
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Research Products
(7 results)