2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20590306
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
滝野 隆久 Kanazawa University, がん研究所, 准教授 (40322119)
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Keywords | ECM / MMP / 細胞外環境 / 細胞運動 / インテグリン / 浸潤 / 増殖 / シグナル |
Research Abstract |
細胞外マトリックス(ECM)分解と細胞運動誘導の協調的制御は、細胞運動・浸潤の連続性維持に重要であると考えられる。特に膜型マトリックスメタロプロテアーゼ(MT-MMP)は、ECMの変化誘導とそれを感知する細胞システムを制御しており、MT-MMPによる細胞局所超微小環境の変化が細胞運動・浸潤の連続性維持に密接に関与していると推測される。本研究では、MT1-MMPのECM分解による細胞外微小環境変化誘導が細胞接着斑の代謝回転と細胞運動・誘導シグナルの連続性を維持する機構の解明を行い、がん転移阻止に向けた新しい分子標的開発を目標とする。 1) MT1-MMPによる細胞運動誘導機構 膜型マトリックスメタロプロテアーゼ(MT1-MMP)による局所的細胞外マトリックス(ECM)分解に起因する細胞接着斑の不安定化が、インテグリンを介した情報伝達経路と細胞運動極性形成・維持に及ぼす影響を検討した。MT1-MMP発現は、チロシンリン酸化酵素Srcによる下流の分子のリン酸化を亢進した。このリン酸化亢進にはMT1-MMPの細胞内ドメインが重要であることから、MT1-MMPの細胞内局在や結合分子の検索に重点を置いて研究を行っている。 2) MT1-MMPによる細胞外微小環境変化誘導と浸潤性増殖 本年度は、イヌ腎上皮MDCK細胞やヒト乳癌MCF-7細胞のコラーゲンゲル培養において、MT1-MMPを発現させることによりFAKとERKのリン酸化が亢進することを明らかにした。このリン酸化の亢進は、MMP阻害剤処理や腫瘍細胞のMT1-MMPをsiRNAを用いてknockdownすることにより抑制された。Src阻害剤処理やsiRNAを用いたc-Srcのknockdownは、MT1-MMP活性に影響を与えずにFAKやERKのリン酸化を抑制した。また、MT1-MMP発現によるFAKやERKのリン酸化亢進とともに、フィブロネクチンの産生が誘導される結果が得られた。また、MDCK細胞は3次元コラーゲンゲル内で嚢胞周囲にIV型コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン等からなる基底膜様構造を形成する。MT1-MMP発現による増殖速度の違いと関連したECM成分をimmunoblottingおよび免疫染色法にて解析し、細胞増殖や運動におけるコラーゲンゲル弾性(細胞外微小環境)の意義を検討する。
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