2009 Fiscal Year Annual Research Report
小胞体ストレス誘導性転写因子の病態への新たな関与機構
Project/Area Number |
20590310
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
後藤 知己 Kumamoto University, 教育学部, 教授 (20264286)
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Keywords | 小胞体ストレス / CHOP / 動脈硬化 / コレステロール / アポトーシス / マクロファージ |
Research Abstract |
まず、動脈硬化を発症しやすいApoE-KOマウスを使用し、高脂肪食投与による動脈硬化形成モデル、および頸動脈結紮-カフ留置による動脈硬化プラーク破綻モデルマウスを作成し、動脈硬化病態への小胞体ストレス経路の関与について解析した。その結果、動脈硬化の進展とともに、プラーク内に小胞体ストレス誘導性転写因子CHOPを発現したマクロファージが増加し、マクロファージにアポトーシスが誘導されることを認めた。CHOPは、アポトーシスの誘導に働くことが、これまでに明らかにされている。さらに、CHOPが発現しなければ、マクロファージがプラーク内に誘導されても、アポトーシスをおこす細胞はわずかであり、CHOPがアポトーシス誘導に重要な働きをしていることを、CHOP-KOマウスとApoE-KOマウスとの掛け合わせモデルの使用により確認した。CHOPをノックアウトした場合、プラークの破綻も明らかに抑制され、CHOPの発現が、プラーク内におけるマクロファージのアポトーシス誘導を介して、プラークを不安定化し、プラーク破綻をひきおこしているものと考えられる。しかし、プラークの大きさに対してのCHOPの関与は限定的であり、プラークの成長そのものとプラーク破綻とは、異なった機序が働いているものと考えられる。 また、野生型およびCHOP-KOから腹腔マクロファージを調製して、変性LDLを投与し、小胞体ストレス経路の誘導やアポトーシスの有無を檢証した。その結果、変性LDL投与にACAT阻害剤を追加投与して細胞内に遊離コレステロールを蓄積させた場合、小胞体へのコレステロール蓄積が誘導されるとともに、CHOPを含む小胞体ストレス経路が誘導された。動脈硬化末期では、蓄積するコレステロールは遊離型が増加すると報告されており、この実験結果は、動脈硬化末期でのCHOPの誘導機構を説明するものであると考えられる。
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