2008 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内小胞輸送系分子タキシリンの腫瘍形成における発現と機能に関する解析
Project/Area Number |
20590314
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
伊藤 雅彦 Dokkyo Medical University, 医学部, 助教 (70270486)
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Keywords | 小胞輸送 / 分泌細胞 / 癌 |
Research Abstract |
小胞輸送調節タンパク質syntaxin-4結合分子として同定されたタキシリンは、様々な組織に発現していることがノザンブロット解析から示唆されていたが、組織内での発現部位や疾患に伴う発現変化については未知の状態であった。そこでまずヒト正常組織について、タキシリン発現部位の解析を詳細に行った。その結果、タキシリン分子の発現は特定の細胞群において強く認められることが明らかとなった。最も高発現を示したのは大腸および直腸内の神経内分泌細胞であり、膵臓ランゲルハンス島の内分泌細胞も強陽性であった。また、唾液腺の漿液性細胞・胃の主細胞など、いずれも分泌性細胞がタキシリン陽性であり、生体内においてタキシリンが特定の分泌プロセスに関与することが強く示唆される結果となった。 一方、タキシリンは神経星状細胞腫に過剰発現する遺伝子の一つであることが報告されている。そこで、タキシリンの過剰発現が細胞腫において広く認められる現象かどうか、種々の腫瘍組織サンプルを用いて検討を行った。遺伝子レベルでの報告と一致して、神経膠芽腫においてタキシリンの強い過剰発現が認められた。その他、骨肉腫やメラノーマなど間葉系細胞由来の腫瘍全般においてタキシリンは強く発現していた。また、大腸・前立腺・乳腺などの上皮細胞由来腫瘍においても発現亢進が認められた。次いで、タキシリン過剰発現が癌の進行や転移と関係しないか50例の乳癌サンプルを用いて解析を行ったところ、悪性度の高い浸潤性乳管癌ばかりでなく非浸潤性乳管癌においても過剰発現が認められた。したがって、タキシリン発現の亢進は様々なタイプの癌において起こり、また癌の早期においても変化が開始される可能性が高いものと考えられた。こうした発現亢進が、分泌過程を含めどのような細胞内プロセスを介して癌細胞にどのような影響を及ぼしているか、今後の検討課題の一つである。
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Research Products
(1 results)