2010 Fiscal Year Annual Research Report
血管新生因子による病的およびに機能的血管新生に関する病態学的研究
Project/Area Number |
20590342
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中野 敏昭 九州大学, 大学病院, 助教 (10432931)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鶴屋 和彦 九州大学, 医学研究院, 寄附講座教員 (20372740)
谷口 正智 九州大学, 医学研究院, 助教 (60419562)
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Keywords | 血管新生因子 / 動脈硬化 / VEGF / 病理学 |
Research Abstract |
(1)動脈硬化プロセスにおける血管新生、リンパ管新生の関与 これまでに、ヒトの動脈硬化と類似の粥状動脈硬化動物モデルであるApoE欠損マウスに対し、VEGF-AおよびVEGF-C投与により動脈硬化が進行し、この機序としては、VEGF-AまたはCの投与により、大動脈内皮細胞の接着分子の発現増加が起こることを介していることを報告した。更に、リンパ管の抑制効果は、マウス虚血下肢モデルにおいては増悪し(Onimaru M, Am J Physiol Heart Circ Physiol 2009)、マウスでの口腔扁平上皮癌細胞の増殖は抑制した(Matsuura M, Am J Pathol 2009)。血管新生、リンパ管新生は、虚血下肢などの局所の血行不良な病態においてのみ血流改善による修復の効果を発揮し、全身性動脈硬化性疾患や癌の病態では増悪する因子となると考えられる。更に、ヒト腹膜透析手術標本において、腹膜の病的肥厚と血管新生の影響について検討したところ、肥厚した腹膜には多くの血管新生が認められ、その血管の多くは周皮細胞が欠如していることを確認した。このことは、致死的病気である被嚢性腹膜硬化症の発症は、腹膜における炎症修復課程において正常な血管新生課程が行われていないことが原因の一つと考えられる。 (2)慢性腎障害における動脈硬化進行プロセスと血管新生 近年慢性腎臟病が動脈硬化性疾患のリスクファクターであることが報告されており、慢性腎不全患者の動脈硬化の進行について、剖検症例をもちいヒト冠状動脈硬化進行の程度を評価した。慢性腎不全が進行すると動脈硬化は有意に進行し、高血圧、糖尿病などのリスクファクターの影響を除いても、腎不全は動脈硬化を進行させた(Nakano T, Am J Kidney Dis 2010)。この動脈硬化巣に対し、酸化LDL、単球/マクロファージ、血管内皮細胞、VEGF-Aについて免疫染色を行った。腎機能の低下に従って、冠状動脈内膜内新生血管数は有意に増加し、VGEF-A陽性面積も増加を認めた。更に、動脈硬化巣内出血の頻度は腎機能の低下に従って有意に増加した。このことから、慢性腎臓病患者における冠状動脈粥状硬化病変は、内膜内に病的新生血管の増加を認め、粥腫の破綻の危険が高いことが示唆された。その原因には、酸化LDLの沈着亢進による動脈硬化巣内の血管新生が悪影響していることが示唆される。
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Research Products
(2 results)