2010 Fiscal Year Annual Research Report
肺神経内分泌癌の網羅的解析による疾患概念の整理と臨床診断への応用
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20590358
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Research Institution | Japanese Foundation For Cancer Research |
Principal Investigator |
元井 紀子 財団法人癌研究会, 癌研究所病理部, 研究員 (70292878)
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Keywords | 肺癌 / 神経内分泌癌 / 小細胞癌 / 大細胞神経内分泌癌 / 網羅的発現解析 / 分子病理診断 / 遺伝子発現解析 / 免疫染色 |
Research Abstract |
【目的】肺神経内分泌腫瘍の正確な診断と治療のために、神経内分泌分化を示す肺癌の遺伝子、蛋白発現プロファイルを解析し、病理学的疾患単位の再検討、診断、治療指標に有用な指標の解明を行う。 【方法】肺癌切除検体を用いてAffymetrix Genechip HG U133 Aによる網羅的遺伝子発現を検索、腺癌(n=100)、神経内分泌癌(NEC7)で発現レベルの異なる遺伝子を抽出。選択遺伝子についてHGNEC (LCNEC 12,SCLC 5), LGNEC (Carcinoid 3)、NE形態のみを示すNSCLC (NE-mo 12),NE形質陽性NSCLC (NE-ph2), NSCLC (105)におけるmRNA levelを定量RT-PCR、QuantiGene plex (QGP)で、蛋白発現を免疫染色で検討した。特に有用なマーカーとして期待されるASCL1などの遺伝子発現機構を解明するために、遺伝子プロモーター領域のメチル化状態を検索した。 【結果】Genechip発現解析では、NECでASCL1,KI67,MCM10,DLL3等の発現が亢進、PPARγ,SFTPC等が低下していた。mRNA発現解析では、NECとNSCLCは異なる発現Profile、さらにHGNECとLGNECは異なるprofileを示し、発生機序が異なる可能性が示唆されたが、HGNECであるLCNEC,SCLCは区別することができなかった。NE-mo,NE-phはNEマーカーの発現は低く、NSCLCと類似したProfileであったが、細胞増殖能は高く、通常のNSCLCとHGNECの中間的な結果を示し、高悪性度であった。また、ASCL1は免疫染色、定量RT-PCRの結果はよく相関し、臨床的に予後不良な症例で高発現していた。メチル化状態は有意な差は認められなかった。 【結論】病理形態学的特徴は遺伝子、蛋白発現の特徴を反映しており、組織型相互の関係が解明された。NECの有用な診断指標としてASCL1などが示唆された。ASCL1の発現機序、発がん機構の解明にはさらなる検討が必要である。
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