Research Abstract |
Integrinβ4, ErbB2およびMetを内在性に発現しているヒト前立腺癌細胞DU145を用いて,sh-RNAにてintegrinβ4をノックダウンしたクローンを作製し,ErbB2やMetに与える影響を検討した.その結果,ノックダウン細胞において,ErbB2とヘテロダイマーを作るErbB3のリガンドであるHeregulin(HRG)や,MetのリガンドであるHepatocyte growth factor(HGF)を投与して刺激した際に,ErbB2やMetのチロシンリン酸化が,コントロール細胞に比べて有意に減少した.またこれらのリガンドで刺激した際の遊走能,浸潤能および増殖能を検討したところ,ノックダウン細胞でこれらの能力が有意に減少することを確認した. さらに,integrinβ4とMetを発現していないが,ErbB2を発現するヒト前立腺癌細胞LNCapを用いて,integdnβ4をトランスフェクションして高発現させて,ErbB2のチロシンリン酸化に与える影響をみたところ,トランスフェクション細胞において,HRGで刺激した際のErbB2のチロシンリン酸化が有意に増加することを確認した.またトランスフェクション細胞が,増殖能を増加させることも確認した. 次に,ヒト前立腺癌組織において,integrinβ4の発現を検討したところ,半数以上の症例で癌細胞にintegrinβ4の発現を認めた.またintegrinβ4を発現している癌細胞の多くが,ErbB2やMetを共発現していることを確認した.このことから,ヒト前立腺癌細胞のみならず,ヒト前立腺癌組織においても,integrinβ4とErbB2やMetが強く関わっている可能性が示唆された.臨床病理学的な検討では,integrinβ4の発現とGleason分類などとの関連性は認められなかった. 以上より,ヒト前立腺癌において,integrinβ4がErbB2やMetのチロシンリン酸化をコントロールすることにより,それらを発現する腫瘍細胞の進展に関与している可能性が示唆された.
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